「病気になったのは、あなたのせいじゃないよ」と、
つらかったときの自分に言ってあげたい。
いちばん辛かったときは、人との距離を置いていたという一柳ナヲさん。家族や同僚のやさしさに触れ、今はその頃の自分を励まし、人と人をつないでいくことに関わりたいと話します。
「病気になったのは、あなたのせいじゃないよ」と、
つらかったときの自分に言ってあげたい。
いちばん辛かったときは、人との距離を置いていたという一柳ナヲさん。家族や同僚のやさしさに触れ、今はその頃の自分を励まし、人と人をつないでいくことに関わりたいと話します。
はじめは、職場でこの病気のことをうまく説明できなくて…。そのときに仲のいい同僚が「再発しないために私たちができることを箇条書きにしてみて。あなたの代わりにみんなに説明するから」と言ってくれたんです。優しい励ましの言葉もありがたいのですが、こんなふうに仕事上の私を支えてくれる言葉もあるんだって、とてもうれしく思ったのを覚えています。
いちばん病気がつらかったときは、人に迷惑をかけるたびに「ごめんなさい」と謝ってばかりいました。そのうち迷惑をかけてしまうのが怖くなって、人と距離を置こうと心のシャッターを下ろしてしまいました。自分の感情は処理できても、人が私を思ってくれる感情はどうすることもできないから、優しい気遣いを断ってしまったときの相手の悲しそうな顔を見るのがつらかったんです。でもあるとき、家族が私のためにこっそり泣いてくれているのを見て、はじめて誰かがそばにいるありがたさを感じました。自分を気遣ってくれる、見守ってくれる人がいることが、こんなに支えになるんだと強く思いました。
もし、つらかったときの自分に会えるなら「病気になったのは、あなたのせいじゃないよ」と言ってあげたい。声をあげられない患者さんもたくさんいると思いますが、多発性硬化症に限らず、誰もが何らかの痛みを抱えていると思うんです。だからきっと、わかってくれる人はいる。私もそう信じて、人と人をつないでいけるようなことに携わっていけたらと思っています。
撮影:国分真央 MAO KOKUBU
フォトグラファー。東京都出身。広告、PR、CDジャケット、書籍表紙など、
Instagramを中心に幅広く活躍中。