石破 和将さん

辛いこともいつかポジティブに捉えることができる。
好きなことや目標をあきらめずに叶えたい

コーヒーとお笑いが好きな石破さん。20代という若くしての発症を受け止めながら、趣味や目標を一つひとつ実現しようとアクティブに活動しています。

多発性硬化症(以後MS)の始まりは8年ほど前。友人たちと行った温泉で湯船に浸かったとき、左の腕や脚で感じる温度が右半身より明らかにぬるかったことに違和感を覚えました。その後、痺れの症状も出てきたので神経外科を受診しようと病院に行ったところ、ソーシャルワーカーの方から神経内科かも……と言われてそこで診てもらったら、当日と翌日の検査を経て、「医者の経験から言ってほぼ間違いなくMS」と伝えられました。正式にMSと診断されたのは半年後に再発したときです。

難病と聞き、余命宣告されるのではないかと不安でしたが、主治医の先生が今は薬や治療方法がたくさんあることや、早い段階で治療できたことが良かったと丁寧に説明してくださり安心しました。その後も、仕事に支障がないようにと入院せずに通院での治療にしてくれたり、不安があるときは電話で相談できたりと、主治医の先生や病院の皆さんの配慮やサポートには感謝の気持ちでいっぱいです。

僕は今、障がいのある方への就労支援を行う仕事をしています。面接時に、MSのことを会社に伝えるのは何の支障もありませんでしたが、同僚やプライベートの友人たちには病気のことをすぐには伝えられずにいました。というのも、僕はお笑いが好きで自分でも友人を笑わせたりユーモアを言ったりするのが好きなんです。だから、気を遣って笑ってくれなくなるのが不安でした。でも、発症して半年後くらいに仲のいい友人一人だけに病気のことを打ち明けたら、距離を置かれることは全くありませんでした。それからは病気を隠すことはしていません。

MSになってしんどかったのは治療を始めたばかりの頃、難病特定医療費受給者証を取得するまでに高額な治療費がかかったことです。病気のことを友人に話せずにいたし、交際費や娯楽費を削らざるを得なかったので、歯がゆい思いで友人たちからの誘いを断っていました。事情は違いますが、新型コロナウイルスの影響で、MSをはじめとした免疫系疾患の方は感染予防のために外出や誘いを遠慮することが多かったと思います。人との繋がりを大切にしたいと思っていても、表面には見えない事情で難しい人がいるということを、少しだけ心に留めておいてもらえるとうれしいですね。

自分なりのコーヒーを極めること、お笑いの研究、アメリカでのNBA観戦……など、僕にはやりたいことがたくさんあります。目下の目標は、発症後に出会って結婚した妻とのマイホームを持つこと。土地や家の見学をし、夢の実現に近づいていますが、僕がMS患者という理由で家のローンが組みづらいことがわかりました。でも、きっと方法はあるはず! 壁にぶつかったり辛いことがあったりしても、いつかはポジティブに捉えられる日がくると信じ、何事もあきらめずに実現させていきたいです。

撮影:国分真央 MAO KOKUBU
フォトグラファー。東京都出身。広告、PR、CDジャケット、書籍表紙など、
Instagramを中心に幅広く活躍中。