日々の小さなよろこびや優しさに感謝しながら、
MSに向き合っていく
すっと伸びた背筋に帽子とステッキがトレードマークの福冨さんは、多発性硬化症の患者会やコミュニティの頼れるリーダー的存在。自らの症状や経験を元に綴った著書を出版するなど、積極的に啓発活動に取り組んでいます。
日々の小さなよろこびや優しさに感謝しながら、
MSに向き合っていく
すっと伸びた背筋に帽子とステッキがトレードマークの福冨さんは、多発性硬化症の患者会やコミュニティの頼れるリーダー的存在。自らの症状や経験を元に綴った著書を出版するなど、積極的に啓発活動に取り組んでいます。
最初に多発性硬化症(以下、MS)と診断された時は、病名さえ知らなかったので、他人事のような気持ちでした。しかし、目が複視で見えづらくなったり、足が動かしづらくなったりと症状が進行していくうちに、この難病と本気で向き合わなければという気持ちになり、『多発性硬化症1年生のためのMS入門書』を執筆しました。この本が私と同じMS患者さんの不安や疑問を解決する一助となり、周りの方がMSを知るきっかけになればうれしいですね。
MSの引き金の一つはストレスといわれています。それを少しでも減らしてポジティブな気持ちでいるために、私の場合、帽子やステッキ、万年筆など身近な日用品に少しこだわって、使うたびにささやかなよろこびを味わっています。また、趣味の写真撮影もいい気分転換に。最近はスマートフォンで、帰り道の夕景や路上の草花など、ふと心が動かされる美しい瞬間を切り取るのが好きですね。こうした毎日の小さなよろこびが、私のリラックスの源です。
今、あらためて思うことは、自分はひとりじゃないということ。病気になると自分のことでいっぱいいっぱいになってしまいます。それは当たり前だし、仕方のないこと。でもそんな時は、自分自身を俯瞰するように“一歩ひいてみる”と、周りにサポートしてくれる家族や仲間、気遣ってくれる人がいることに気づきます。電車で席を譲ってくださったり、MSのことを理解してくれようとしてくださったり……。そういったさりげない優しさ一つひとつに、「ありがとう」と真心を込めて丁寧に伝えるようになりました。一見見た目には症状がわかりづらい病気ですが、これからもひとりでも多くの人にMSという病気や症状を理解してもらうために、さまざまな活動に取り組んでいきたいと思っています。
撮影:国分真央 MAO KOKUBU
フォトグラファー。東京都出身。広告、PR、CDジャケット、書籍表紙など、
Instagramを中心に幅広く活躍中。