バイオジェン・ジャパン株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長・傳幸諭(でん たかつぐ))は、「クアルソディ®髄注100mg」(一般名:トフェルセン)について、「SOD1遺伝子変異を有する筋萎縮性側索硬化症における機能障害の進行抑制」の適応症で薬価収載と同時に日本でも販売を開始いたしますのでお知らせします。クアルソディは運動ニューロン疾患(MND)としても知られるALSに対し、遺伝的原因を標的とする治療薬として日本で初めて承認された医薬品です。
バイオジェン・ジャパンの社長である傳幸諭は次のように述べています。「2024年12月27日に承認されたクアルソディの薬価が3月12日の中医協(中央社会保険医療協議会)において了承されました。治療薬を待っておられるSOD1-ALS患者さんに、少しでも早く提供させていただきたく、薬価収載と同時に販売を開始いたします。ALSに苦しむ人々の生活と人生を変えるという当社のミッションの一環として、私たちはクアルソディの恩恵を享受すべき人々が確実に、かつ速やかにこの治療薬にアクセスできるよう、遺伝子検査の浸透も含めて、治療体制を整えるべく努力してまいります」。
クアルソディは、SOD1-ALS患者さんを対象とした無作為化プラセボ対照第III相試験(VALOR試験)及び非盲検長期継続投与試験の結果に基づき承認されました。VALOR試験の主要評価項目は、疾患進行が急速な被験者群における投与 28 週時点のALSFRS-R合計スコアのベースラインからの変化量でした。本剤投与群でプラセボ投与群と比較してALSFRS-Rの低下は小さい傾向にありましたが、統計学的に有意な差は示しませんでした。しかしながら、非盲検長期継続投与試験との併合解析において、いずれの評価時点及び解析対象集団においても本剤群では対照群と比較して、ALSFRS-R 合計スコアのベースラインからの変化量が小さい傾向にありました。加えて、死亡または永久人工呼吸器装着の発現割合が本剤群で低い傾向が示されました。これら結果に基づき、極めて希少な進行性疾患であり、治療選択肢が非常に限られているSOD1-ALSに対して、本剤の有効性が期待できると判断されました。
クアルソディの投与を受けた被験者で報告された主な副作用は、脊髄炎(3.4%)、神経根炎(2.7%)、視神経乳頭浮腫(4.8%)、無菌性髄膜炎(4.1%)、頭痛(13.6%)、髄液細胞増加症(8.2%)、錯感覚(6.1%)、CSF蛋白増加(22.4%)、CSF白血球数増加(14.3%)、四肢痛(17.7%)、筋肉痛(10.2%)、疲労(5.4%)、処置による疼痛(6.8%)でした。
クアルソディは、SOD1遺伝子の変異を伴う筋萎縮性側索硬化症に係る効能・効果に対して、2023年4月に米国で迅速承認、2024年5月に欧州で特例的条件下での承認、2024年9月に中国で条件付き承認されています。その他の地域においても各国の規制当局との検討が継続中です。
筋萎縮性側索硬化症とSOD1-ALSについて
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、随意筋の運動をコントロールする脳と脊髄における運動ニューロンの喪失をもたらす希少かつ進行性で死に至る神経変性疾患です。ALSは患者さんに筋力の低下と委縮をもたらし、徐々に運動、発話、摂食の能力を喪失させ、最終的には呼吸することもできなくなり、自立を奪います。ALS患者さんの平均余命は症状の発現後3年から5年です。3
複数の遺伝子がALSの発症に関わっています。遺伝子検査により、ALSの家族歴がなくとも遺伝子変異に関係するタイプのALSであるかどうかを判断することができます。SOD1遺伝子変異は、全世界のALSの推計罹患者数16万8000人の約2%に関わっています(SOD1-ALS)1。
SOD1-ALSの患者さんは、身体にSOD1 遺伝子変異によるSOD1タンパク質の有害な誤った折り畳みを生じます。この有害なタンパク質が運動ニューロンの変性を発現させ、進行性の筋力の低下、機能の喪失、そして最終的には死亡を招きます4。
クアルソディ® (トフェルセン)について
クアルソディ®はアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)で、SOD1タンパク質の生成を抑制するためにSOD1 mRNAに結合するように設計されています。
バイオジェンは開発提携およびライセンス契約によりクアルソディをアイオニス・ファーマシューティカルズ社から導入しました。クアルソディはアイオニス社により創薬されました。
クアルソディについては臨床第III相無作為化プラセボ対照試験(ATLAS試験)も進行中で、これはSOD1遺伝子変異を有する発症前の方にクアルソディの投与を開始することで臨床的症状の発現を遅らせることができるかどうかを検証するための試験です。