SOD1遺伝子変異を有する筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬
「クアルソディ®髄注100mg」が製造販売承認取得
~遺伝的原因を標的とする初の治療薬が日本でも承認~

バイオジェン・ジャパン株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長・傳幸諭(でん たかつぐ))は、「クアルソディ®髄注100mg」(一般名:トフェルセン)について、「SOD1遺伝子変異を有する筋萎縮性側索硬化症における機能障害の進行抑制」の適応症で、本日製造販売承認を取得しましたことをお知らせします。クアルソディは運動ニューロン疾患(MND)としても知られるALSに対し、遺伝的原因を標的とする治療薬として日本で初めて承認された医薬品です。

バイオジェン・ジャパンの社長である傳幸諭は次のように述べています。「本日、私たちは治療法がなかった日本のSOD1-ALSの患者さん及びご家族に治療薬をお届けできることをうれしく思っています。臨床試験で示された有効性と安全性のプロファイルに基づき、クアルソディが、重篤な疾患を抱える患者さんに有意義な影響を及ぼすことができると信じています。ALSに苦しむ人々の生活と人生を変えるという当社のミッションの一環として、私たちはクアルソディの恩恵を享受すべき人々が確実に、かつ速やかにこの治療薬にアクセスできるよう、遺伝子検査の浸透も含めて、治療体制を整えるべく努力してまいります」。

一般社団法人 日本ALS協会会長の恩田聖敬氏は次のように述べています。「この度、待ち望んだトフェルセンの承認の日を迎えることができました。このSOD1遺伝子変異のALSに対する治療薬が、あらゆるALS解明の突破口となることを期待します。バイオジェン・ジャパン社はもとより、ご尽力いただいた厚生労働省、PMDA、国会議員、メディアなど全ての関係者の皆様に感謝申し上げます」。

クアルソディは、SOD1-ALS患者さんを対象とした無作為化プラセボ対照第III相試験(VALOR試験)及び非盲検長期継続投与試験の結果に基づき承認されました。VALOR試験の主要評価項目は、疾患進行が急速な被験者群における投与 28 週時点のALSFRS-R合計スコアのベースラインからの変化量でした。本剤投与群でプラセボ投与群と比較してALSFRS-Rの低下は小さい傾向にありましたが、統計学的に有意な差は示しませんでした。しかしながら、非盲検長期継続投与試験との併合解析において、いずれの評価時点及び解析対象集団においても本剤群では対照群と比較して、ALSFRS-R 合計スコアのベースラインからの変化量が小さい傾向にありました。加えて、死亡または永久人工呼吸器装着の発現割合が本剤群で低い傾向が示されました。これら結果に基づき、極めて希少な進行性疾患であり、治療選択肢が非常に限られているSOD1-ALSに対して、本剤の有効性が期待できると判断されました。

 

クアルソディの投与を受けた被験者で報告された主な副作用は、脊髄炎(3.4%)、神経根炎(2.7%)、視神経乳頭浮腫(4.8%)、無菌性髄膜炎(4.1%)、頭痛(13.6%)、髄液細胞増加症(8.2%)、錯感覚(6.1%)、CSF蛋白増加(22.4%)、CSF白血球数増加(14.3%)、四肢痛(17.7%)、筋肉痛(10.2%)、疲労(5.4%)、処置による疼痛(6.8%)でした。

バイオジェン・ジャパンは、国内での治験ならびに拡大治験にご参加いただいた患者さんを中心に、薬価収載日までの間、本剤を無償で提供する予定です。

クアルソディは、SOD1遺伝子の変異を伴う筋萎縮性側索硬化症に係る効能・効果に対して、2023年4月に米国で迅速承認、2024年5月に欧州で特例的条件下での承認、2024年9月に中国で条件付き承認されています。その他の地域においても各国の規制当局との検討が継続中です。

筋萎縮性側索硬化症とSOD1-ALSについて
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、随意筋の運動をコントロールする脳と脊髄における運動ニューロンの喪失をもたらす希少かつ進行性で死に至る神経変性疾患です。ALSは患者さんに筋力の低下と委縮をもたらし、徐々に運動、発話、摂食の能力を喪失させ、最終的には呼吸することもできなくなり、自立を奪います。ALS患者さんの平均余命は症状の発現後3年から5年です。3

複数の遺伝子がALSの発症に関わっています。遺伝子検査により、ALSの家族歴がなくとも遺伝子変異に関係するタイプのALSであるかどうかを判断することができます。SOD1遺伝子変異は、全世界のALSの推計罹患者数16万8000人の約2%に関わっています(SOD1-ALS)1。ALS患者のうち15%以上の方々が遺伝子変異によるものと考えられていますが4、その中にはALSの家族歴が知られていない場合があります1。日本ではSOD1遺伝子変異が最も多く、約30%を占めます5

SOD1-ALSの患者さんは、身体にSOD1 遺伝子変異によるSOD1タンパク質の有害な誤った折り畳みを生じます。この有害なタンパク質が運動ニューロンの変性を発現させ、進行性の筋力の低下、機能の喪失、そして最終的には死亡を招きます4

クアルソディ® (トフェルセン)について
クアルソディ®はアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)で、SOD1タンパク質の生成を抑制するためにSOD1 mRNAに結合するように設計されています。
バイオジェンは開発提携およびライセンス契約によりクアルソディをアイオニス・ファーマシューティカルズ社から導入しました。クアルソディはアイオニス社により創薬されました。

クアルソディについては臨床第III相無作為化プラセボ対照ATLAS試験も進行中で、これはSOD1遺伝子変異を有する発症前の方にクアルソディの投与を開始することで臨床的症状の発現を遅らせることができるかどうかを検証するための試験です。

製品に関する概要

製品名 クアルソディ®髄注100mg
一般名(JAN) トフェルセン
効能・効果 SOD1遺伝子変異を有する筋萎縮性側索硬化症における機能障害の進行抑制
用法・用量 通常、成人には、トフェルセンとして1回100mgを1~3分かけて髄腔内投与する。初回、2週後、4週後に投与し、以降4週間隔で投与する。
副作用 重大な副作用:脊髄炎(3.4%)、神経根炎(2.7%)、視神経乳頭浮腫(4.8%)、無菌性髄膜炎(4.1%)
その他の副作用(5%以上に発現):頭痛(13.6%)、髄液細胞増加症(8.2%)、錯感覚(6.1%)、CSF蛋白増加(22.4%)、CSF白血球数増加(14.3%)、四肢痛(17.7%)、筋肉痛(10.2%)、疲労(5.4%)、処置による疼痛(6.8%)
製造販売承認日 2024年12月27日
製造販売元 バイオジェン・ジャパン株式会社

 

バイオジェンのALSへの継続したコミットメント
バイオジェンは10年以上にわたりあらゆる形のALSへの理解を深めるための研究の推進に邁進してきました。当社は2013年に開発後期段階のALS治療薬候補の開発を断念するという難しい決断を迫られたにもかかわらず、この分野への投資と研究の開拓を継続してきました。バイオジェンは、必要とする患者さんに治療薬をお届けする可能性を高めることを目標に、遺伝性およびその他のALSを対象とする当社の幅広い治療薬候補のポートフォリオにこれまでの大切な学びを活かしてきました。これらの活かされた学びには、特定の患者集団を対象に遺伝子的に検証されたターゲットを評価すること、各々のターゲットに最も適切なモダリティを追求すること、センシティブな臨床評価項目を採用すること、等が含まれます。

バイオジェン社について
1978年の創立以来、バイオジェンは世界をリードするバイオテクノロジー企業で、患者さんの人生を変革し、株主や私たちのコミュニティに価値をもたらす新薬をお届けするために革新的なサイエンスを開拓しています。
私たちは優れた治療アウトカムをもたらすファースト・イン・クラスの治療薬や治療法を推進するために、人類の生物学に対する深い理解を応用し、異なるモダリティを活用します。私たちは長期的な成長をもたらすために投資利益率のバランスを考慮した上で、果敢にリスクを取るというアプローチを採択しています。

バイオジェン・ジャパンに関する情報については、https://www.biogen.co.jp/ 、およびSNS媒体FacebookXInstagramYouTubeLinkedInLINEをご覧ください。

参考文献
  1. Brown CA, Lally C, Kupelian V, Flanders WD. Estimated Prevalence and Incidence of Amyotrophic Lateral Sclerosis and SOD1 and C9orf72 Genetic Variants. Neuroepidemiology. 2021;55(5):342-353. doi: 10.1159/000516752. Epub 2021 Jul 9.
  2. QALSODY Prescribing Information, Cambridge, MA: Biogen.
  3. National Institute of Neurological Disorders and Stroke. Amyotrophic Lateral Sclerosis (ALS). Available at: https://www.ninds.nih.gov/health-information/disorders/amyotrophic-lateral-sclerosis-als. Accessed: April 2023.
  4. Akcimen F, Lopez ER, Landers JE, et al. Amyotrophic lateral sclerosis: translating genetic discoveries into therapies. Nat Rev Genet. 2023. https://doi.org/10.1038/s41576-023-00592-y
  5. 日本神経学会監修:筋萎縮性側索硬化症(ALS)診療ガイドライン 南江堂, 2023
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