本資料は、米バイオジェン社が 2024年5月30日(現地時間)に発表したプレスリリースの日本語訳として発表させていただくものです。内容につきましては原本である英文が優先します。

 

バイオジェン、遺伝子変異を有する希少なALSへの初の治療薬QALSODY ®(トフェルセン)が欧州委員会の承認を取得

  • SOD1-ALSは、深刻で致死的な遺伝子変異を有する極めて希少なALSであり、欧州では患者数は1,000人未満と推定されています1
  • QALSODY(一般名:トフェルセン)は、EUで承認されたバイオジェンの3つ目の希少疾患治療薬であり、アンメットニーズの高い疾患に対処するという当社のコミットメントを示しています
  • QALSODYの経験により、バイオジェンは、ALSに対する臨床試験デザインを最適化するツールとしてのニューロフィラメントの進展を促し、この分野における飛躍的な進歩の可能性を提供しています。

ケンブリッジ・マサチューセッツ州 – 2024年5月30日 – バイオジェン(NASDAQ略称:BIIB) は欧州委員会(EC)がスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子変異を有する成人の筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬QALSODY® (一般名:トフェルセン)について、オーファン指定下で特例的な状況下で販売承認したことを5月30日に発表しました。QALSODYは運動ニューロン疾患(MND)としても知られるALSに対し、遺伝的原因を標的とする治療薬として欧州連合(EU)で初めて承認された医薬品です。

バイオジェンの神経筋疾患開発部門の責任者であるStephanie Fradette(Pharm D)は次のように述べています。「欧州委員会によるQALSODYの承認は、新しい治療薬を世に出すべく20年以上にわたって共に取り組んできたALS患者さんやそのご家族、研究者、臨床医、支援者の皆さんといったALSコミュニティへのゆるぎない献身の証です。SOD1-ALSと共に生きる方々にできるだけ速やかにQALSODYをお届けできるよう、医学界や各国の規制当局と協力していきます」。

特例的な状況下での販売承認は、ベネフィット/リスク評価は肯定的と判断されながら、疾患の希少性により通常の使用状況では包括的データを取得することが困難な場合に推奨されるものです。欧州医薬品庁(EMA)はQALSODYのオーファン指定を継続することも推奨していました。

ベルギーのルーバン大学病院の神経学教授および神経筋リファレンス・センター長のフィリップ・ヴァン・ダーム博士(Philip Van Damme, M.D., Ph.D.)は次のように述べています。「QALSODYの承認はSOD1-ALS治療のパラダイムシフトを示すとともに、画期的な医薬品を待ち望んできた患者さんやご家族に希望を提供するものです。欧州神経学会(European Academy of Neurology)はALSの新しい治療ガイドラインにおいてQALSODYをSOD1-ALS治療のファーストライン治療に指定すべきであることを確認しました」。

QALSODYの承認は、対象とする作用機序、バイオマーカー及び臨床データを含むエビデンス全体に基づいています。無作為化二重盲検プラセボ対照第III相VALOR試験(108例)では、患者を2:1の割合で無作為に割り付け、QALSODY 100 mg(72例)又はプラセボ(36例)を24週間投与しました。主要有効性評価項目は、ALS機能評価スケール改訂版総スコアのベースラインから28週までの変化量としました。結果はトフェルセン群が数値的に優れていたものの、統計学的な有意差は示しませんでした(ITT集団:トフェルセンのプラセボ群との調整済平均値の差[95%信頼区間]は1.4[-1.3、4.1])。28週時点で、軸索損傷及び神経変性のマーカーである血漿ニューロフィラメント軽鎖(NfL)の平均値が、トフェルセン群(ITT)では55%低下し(ベースラインに対する幾何平均比)、プラセボ群では12%増加しました(プラセボに対するトフェルセンの幾何平均比の差は60%[95%信頼区間] 51%、 67%))。QALSODYの投与を受けた被験者で報告された最も多く発現した副作用は、疼痛(背部痛、腕や脚の痛み)、疲労感、筋肉痛、関節痛、発熱、脳脊髄液中に生じるタンパク質や白血球の増加でした。

欧州ALS専門家・患者団体協議会(EUpALS)の代表であるEvy Reviers氏は次のように述べています。「EUpALSは、欧州のSOD1-ALSの方々が、遺伝子変異を有するALSへの最初の治療薬であるQALSODYの治療を受けられるようになることを非常に嬉しく思います。ALSコミュニティにとってALSが治療可能な疾患になることは非常に大きなマイルストーンです。欧州のALSコミュニティを代表して、これまでのALSとの闘いが新たな時代に入ったことを感慨深く思っています。この医学上の成功に向けて長期にわたって科学・臨床において革新的な努力を継続してくれたバイオジェンに感謝します」。

バイオジェンは欧州で本治療の適用となる患者さんが治療にアクセスできるよう、あらゆるステークホルダーと密に調整を図ってまいります。バイオジェンの早期アクセスプログラム(EAP)を通じて、EU内18カ国330名のSOD1-ALSの患者さんが本治療を受けました。QALSODYは米国で既に承認されて使用されており、その他の地域においても各国の規制当局との検討が継続中です。

QALSODY® (トフェルセン)について
QALSODY®はアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)で、SOD1タンパク質の生成を抑制するためにSOD1 mRNAに結合するように設計されています。米国食品医薬品局はスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子変異を有する成人の筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬としてのQALSODYについて、迅速承認の対象に指定しました。この適応症はQALSODYの治療を受けた被験者群で血漿ニューロフィラメント軽鎖(NfL)の減少が認められたことに基づいて、迅速承認制度の下で承認されました。本適応症に対する承認が継続されるためには検証試験により臨床的ベネフィットを証明することが必要です。2
欧州委員会はオーファン指定下で特例的な状況下でQALSODYを承認しました。

バイオジェンは開発提携およびライセンス契約によりQALSODYをアイオニス・ファーマシューティカルズ社から導入しました。QALSODYはアイオニス社により創薬されました。

QALSODYについては現在進行中の第III相VALOR試験のオープンラベル延長試験(OLE)に加え、臨床第III相無作為化プラセボ対照ATLAS試験も進行中で、これはSOD1遺伝子変異を有する発症前の方にQALSODYの投与を開始することで臨床的症状の発現を遅らせることができるかどうか、そして疾患活動性(血漿NfLの上昇)のバイオマーカーとしてのエビデンスを評価するための試験です。ATLAS(NCT04856982)に関する詳細は clinicaltrials.gov に掲載されています。

筋萎縮性側索硬化症とSOD1-ALSについて
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、随意筋の運動をコントロールする脳と脊髄における運動ニューロンの喪失をもたらす希少かつ進行性で死に至る神経変性疾患です。ALSは患者さんに筋力の低下と委縮をもたらし、徐々に運動、発話、摂食の能力を喪失させ、最終的には呼吸することもできなくなり、自立を奪います。ALS患者さんの平均余命は症状の発現後3年から5年です。3

複数の遺伝子がALSの発症に関わっています。遺伝子検査により、ALSの家族歴がなくとも遺伝子変異に関係するタイプのALSであるかどうかを判断することができます。SOD1遺伝子変異は、全世界のALSの推計罹患者数16万8000人の約2%に関わっています(SOD1-ALS)1。ALS患者のうち15%以上の方々が遺伝子変異によるものと考えられていますが4、その中にはALSの家族歴が知られていない場合があります1

SOD1-ALSの患者さんは、身体にSOD1 遺伝子変異によるSOD1タンパク質の有害な誤った折り畳みを生じます。この有害なタンパク質が運動ニューロンの変性を発現させ、進行性の筋力の低下、機能の喪失、そして最終的には死亡を招きます4

バイオジェンのALSへの継続したコミットメント
バイオジェンは10年以上にわたりあらゆる形のALSへの理解を深めるための研究の推進に邁進してきました。当社は2013年に開発後期段階のALS治療薬候補の開発を断念するという難しい決断を迫られたにもかかわらず、この分野への投資と研究の開拓を継続してきました。バイオジェンは、必要とする患者さんに治療薬をお届けする可能性を高めることを目標に、遺伝性およびその他のALSを対象とする当社の幅広い治療薬候補のポートフォリオにこれまでの大切な学びを活かしてきました。これらの活かされた学びには、特定の患者集団を対象に遺伝子的に検証されたターゲットを評価すること、各々のターゲットに最も適切なモダリティを追求すること、センシティブな臨床評価項目を採用すること、等が含まれます。QALSODYに加えてバイオジェンはTDP43経路に働きかけ、幅広いALSを対象としたプログラムを含めた探索研究段階のパイプラインを有しています。TDP43経路は97%のALS患者さんの症例に見られており、本疾患の顕著な特徴と考えられています。

バイオジェン社について
1978年の創立以来、バイオジェンは世界をリードするバイオテクノロジー企業で、患者さんの人生を変革し、株主や私たちのコミュニティに価値をもたらす新薬をお届けするために革新的なサイエンスを開拓しています。
私たちは優れた治療アウトカムをもたらすファースト・イン・クラスの治療薬や治療法を推進するために、人類の生物学に対する深い理解を応用し、異なるモダリティを活用します。私たちは長期的な成長をもたらすために投資利益率のバランスを考慮した上で、果敢にリスクを取るというアプローチを採択しています。

投資家の皆さんにとって重要な情報についてはバイオジェンのウェブサイトwww.biogen.comに定期的に掲載しています。当社のSNS媒体FacebookLinkedIn, X, YouTubeもご覧ください。

参考文献
  1. Brown CA, Lally C, Kupelian V, Flanders WD. Estimated Prevalence and Incidence of Amyotrophic Lateral Sclerosis and SOD1 and C9orf72 Genetic Variants. Neuroepidemiology. 2021;55(5):342-353. doi: 10.1159/000516752. Epub 2021 Jul 9.
  2. QALSODY Prescribing Information, Cambridge, MA: Biogen.
  3. National Institute of Neurological Disorders and Stroke. Amyotrophic Lateral Sclerosis (ALS). Available at: https://www.ninds.nih.gov/health-information/disorders/amyotrophic-lateral-sclerosis-als. Accessed: April 2023.
  4. Akcimen F, Lopez ER, Landers JE, et al. Amyotrophic lateral sclerosis: translating genetic discoveries into therapies. Nat Rev Genet. 2023. https://doi.org/10.1038/s41576-023-00592-y
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