マサチューセッツ州ケンブリッジおよびカリフォルニア州サウス・サンフランシスコ: 2024年5月22日–バイオジェン・インク(NASDAQ: BIIB)と、深刻な免疫介在性疾患(Immune-mediated diseases: IMD)患者さんの標的治療に特化した未上場の臨床段階のバイオテクノロジー企業であるヒューマン・イミュノロジー・バイオサイエンス社(HI-Bio TM)は、両社が最終契約を締結したことを発表しました。この契約により、バイオジェンは、契約一時金11億5000万ドル、最大6億5000万ドルのマイルストン支払いを行うことになります。
HI-Bio社の主要開発品であるfelzartamabは、完全ヒト型抗CD38モノクローナル抗体であり、臨床試験で形質細胞やナチュラルキラー(NK)細胞などのCD38陽性の細胞を選択的に除去することが示されています。これにより、広範な免疫介在性疾患の臨床アウトカムを改善することに応用できると考えています。
Felzartamabは、原発性膜性腎症(PMN)の治療薬として開発され、米国食品医薬品局(FDA)からブレイクスルー治療の指定(Breakthrough Therapy Designation(BTD))およびオーファンドラッグ指定(ODD)を受けるとともに、腎移植患者における抗体関連型拒絶反応(AMR)の治療薬候補としてのオーファンドラッグ指定(ODD)を受けています。PMNおよびAMRを対象とした第II相試験を完了し、IgA腎症(IgAN)を対象とした第II相試験は現在進行中です。HI-Bio社はそれぞれの適応症を第III相試験に進める予定です。HI-Bio社は、ストックホルムで開催される欧州腎臓学会(ERA)において、腎移植患者を対象としたAMR試験の第II相試験のフルデータと、第II相IgAN試験の中間データの2件の抄録発表を予定しています。FelzartamabはAMR、PMNおよびIgANの適応症において臨床データを有しています。
バイオジェンの開発部門の責任者であるプリヤ・シンハル(Priya Singhal)は次のように述べています。「深刻なアンメットニーズを抱える3つの腎疾患において、主要なバイオマーカーおよび臨床評価項目への影響を実証しているこの後期開発段階の開発品は、バイオジェンが引き続きパイプラインを増強し、免疫疾患領域における専門性を強化する中で、私たちのポートフォリオへの戦略的な新要素となることを確信しています。バイオジェンは、HI-Bio社の社員を私たちのメンバーとして迎え、共にアンメットニーズの高い希少免疫疾患の患者さんのために可能性のある治療法を前進させることを楽しみにしています」。
HI-Bio社の最高経営責任者(CEO)であるTravis Murdoch, M.D.は次のように述べています。「バイオジェンは、開発と商業化に高い能力を有しており、重度の免疫介在性疾患の患者さんのために、felzartamabを含む新薬の開発を加速できる立場にあります。HI-Bio社チームの高い専門知識とバイオジェンのグローバルな事業展開の能力を統合できることを嬉しく思います」。
バイオジェンは、既存の希少疾患におけるグローバルな開発・販売能力と免疫学における高い科学的専門知識を活用し、felzartamabならびにHI-Bio社のパイプラインの進展を支援する予定です。バイオジェンは、HI-Bio社からの専門知識と人材を確保し、免疫介在性疾患における取り組みの拡大に重点を置いたサンフランシスコ・ベイエリアチームの設立を検討しています。
進行中のプログラムであるfelzartamabに加えて、HI-Bio社のパイプラインには、現在第I相試験にあり、一連の補体介在性疾患を対象に開発が継続される可能性がある抗C5aR1抗体であるizastobart/HIB210が含まれます。また、HI-Bio社は様々な免疫介在性疾患の可能性を秘めた探索段階の肥満細胞に対するプログラムを有しています。
契約の財務内容及び条件
契約条件に従い、バイオジェンはHI-Bio社に11億5000万ドルの一時金を支払います。HI-Bio社の株主は、felzartamabプログラムが特定の開発マイルストン達成時に、追加で最大6億5000万ドル、合計で最大18億ドルの支払いを受ける権利を有します。HI-Bio社の買収は、バイオジェンがこれまでに発表した2024年度のガイダンスに影響を及ぼすことはないと予想されます。バイオジェンは買収資金を現金で調達するほか、リボルビング・クレジット契約を活用する可能性もあります。この契約は、必要な規制当局の承認の取得を含め、通常の契約完了条件を満たす必要があり、現在のところ、2024年第3四半期に完了する見込みです。
アドバイザー
バイオジェン社の法律顧問をCovington &Burling LLPが務め、HI-Bio社の財務アドバイザーとしてGoldman Sachs & Co.LLCおよびBofA Security, Inc.、法務アドバイザーとしてGoodwin Procter LLPが務めました。
Felzartamabについて
Felzartamabは、成熟形質細胞に発現するタンパク質であるCD38を標的とする開発中の治療用ヒトモノクローナル抗体です。Felzartamabは臨床試験においてCD38陽性の形質細胞を選択的に除去することが示されており、病原性抗体によって引き起こされる広範な疾患における臨床アウトカムを最終的に改善することができると考えられています。Felzartamabは当初、多発性骨髄腫の治療薬としてMorphoSys AGが開発しました。HI-Bio社は、中国を除くすべての国と地域(マカオ、香港および台湾を含む)において、すべての適応症でfelzartamabを開発及び商業化する権利を独占的にライセンスします。
Felzartamabは、世界中のどの規制当局からもまだ承認されていない開発中の治療薬候補です。
腎移植患者における抗体関連型拒絶反応(AMR)について
抗体関連型拒絶反応(AMR)は腎移植の失敗の主要原因であり、米国では年間に腎移植を受ける患者さんの約12%が慢性AMRに罹患しています1。AMRは腎移植レシピエントにおける遅発性移植腎喪失の主な原因として浮上しています。慢性AMRに対する有効な治療選択肢は現在限られています2。
原発性膜性腎症(PMN)について
原発性膜性腎症(PMN)は腎臓に影響を及ぼす稀なIMDであり、米国における推定発生率は年間約1/100Kとされています3。現在、PMNに対して承認されている治療法はありません。標準治療には、シクロホスファミドなどの免疫抑制療法や、リツキシマブなどのCD20標的B細胞除去薬など、様々な薬剤の適応外使用が含まれています4。これらの治療選択肢を用いても、約1/3の患者さんは寛解に達していません4。
IgA腎症について
免疫グロブリンA腎症(IgAN)は世界中で最も一般的な原発性糸球体腎炎です。慢性腎臓病の主要な原因であり、 IgAN患者さんの最大40%が診断の約20年後に末期腎臓病に進行しています。IgA腎症は、日本では自己腎生検の約40%、欧州では25%、米国では12%であるが、中央アフリカでは5%未満です。5
バイオジェンについて
1978年の創立以来、バイオジェンは世界をリードするバイオテクノロジー企業で、患者さんの人生を変革し、株主や私たちのコミュニティに価値をもたらす新薬をお届けするために革新的なサイエンスを開拓しています。私たちは優れた治療アウトカムをもたらすファースト・イン・クラスの治療薬や治療法を推進するために、人類の生物学に対する深い理解を応用し、異なるモダリティを活用します。私たちは長期的な成長をもたらすために投資利益率のバランスを考慮した上で、果敢にリスクを取るというアプローチを採択しています。
投資家の皆さんにとって重要な情報についてはバイオジェンのウェブサイトwww.biogen.comに定期的に掲載しています。当社のSNS媒体Facebook, LinkedIn, X, YouTubeもご覧ください。
HI-Bio社について
Human Immunology Biosciences, Inc.(HI-BioTM)は、免疫介在性疾患に対する精密治療法を開発し、次の段階として臨床免疫学を導入するために、ARCH Venture PartnersとMonograph Capitalによって育成されました。臨床腫瘍学における標的療法の台頭に端を発し、HI-Bio社はIMDを誘発する免疫細胞型を標的とし、除去する治療戦略を追求しています。最も先行している候補であるfelzartamabは、CD38を標的とする抗体であり、CD38陽性の細胞(形質細胞およびナチュラルキラー[NK]細胞を含む)を除去することが臨床試験で示されています。CD38陽性細胞は、抗体関連型拒絶反応(AMR)、IgA腎症(IgAN)、ループス腎炎(LN)および原発性膜性腎症(PMN)を含む様々な疾患に関与しています。他の投資家には、アルファウェーブのグローバル投資家、アーキンバイオキャピタル、ジェイトウの資本家、バイキング・グローバル投資家などが含まれます。
HI-Bio社の詳細については、www.hibio.comをご覧になるか、LinkedIn及びXをご覧ください。
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