バイオジェンのトフェルセン、希少な遺伝型のSOD1-ALSに対する治療薬として国内で承認申請を提出

バイオジェン・ジャパン株式会社(本社:東京都中央区、社長:傳 幸諭)は、スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子変異を有する成人の筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬トフェルセンについて、日本における製造販売承認申請を行いましたのでお知らせします。承認されれば、トフェルセンは、運動ニューロン疾患(MND)としても知られるALSの中のSOD1遺伝子変異を有するSOD1-ALSに対し、遺伝的原因を標的とする日本で初の治療薬となります。

本剤については、米国食品医薬品局(FDA)が2023年4月25日に迅速承認しています。また欧州では欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会(CHMP)が2024年2月23日に、特例的な状況下での販売承認を推奨する肯定的見解を採択しました。現在欧州委員会(EC)で欧州連合における販売承認が検討されています。

トフェルセンについて
トフェルセン(米国での製品名:QALSODY®)はアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)で、SOD1タンパク質の生成を抑制するためにSOD1 mRNAに結合するように設計されています。米国食品医薬品局はスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子変異を有する成人の筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬としてのトフェルセンについて、トフェルセンの治療を受けた被験者群で血漿ニューロフィラメント軽鎖(NfL)の減少が認められたことに基づいて、迅速承認制度の下で承認しました。本適応症に対する承認が継続されるためには検証試験により臨床的ベネフィットを証明することが必要です。2

バイオジェンは開発提携およびライセンス契約によりトフェルセンをアイオニス・ファーマシューティカルズ社から導入しました。トフェルセンはアイオニス社により創薬されました。

トフェルセンについては現在進行中の第III相VALOR試験のオープンラベル延長試験(OLE)に加え、臨床第III相無作為化プラセボ対照ATLAS試験も進行中で、これはSOD1遺伝子変異を有する発症前の方にトフェルセンの投与を開始することで臨床的症状の発現を遅らせることができるかどうか、そして血漿NfLの上昇のバイオマーカーとしてのエビデンスを評価するための試験です。ATLAS(NCT04856982)に関する詳細は clinicaltrials.gov に掲載されています。

筋萎縮性側索硬化症とSOD1-ALSについて
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、随意筋の運動をコントロールする脳と脊髄における運動ニューロンの喪失をもたらす希少かつ進行性で死に至る神経変性疾患です。ALSは患者さんに筋力の低下と委縮をもたらし、徐々に運動、発話、摂食の能力を喪失させ、最終的には呼吸することもできなくなり、自立を奪います。ALS患者さんの平均余命は症状の発現後3年から5年です。3

複数の遺伝子がALSの発症に関わっています。遺伝子検査により、ALSの家族歴がなくとも遺伝子変異に関係するタイプのALSであるかどうかを判断することができます。SOD1遺伝子変異は、全世界のALSの推計罹患者数16万8000人の約2%に関わっています(SOD1-ALS)1。ALS患者のうち15%以上の方々が遺伝子変異によるものと考えられていますが4、その中にはALSの家族歴が知られていない場合があります1

SOD1-ALSの患者さんは、身体にSOD1 遺伝子変異によるSOD1タンパク質の有害な誤った折り畳みを生じます。この有害なタンパク質が運動ニューロンの変性を発現させ、進行性の筋力の低下、機能の喪失、そして最終的には死亡を招きます4

バイオジェンのALSへの継続したコミットメント
バイオジェンは10年以上にわたりあらゆる形のALSへの理解を深めるための研究の推進に邁進してきました。当社は2013年に開発後期段階のALS治療薬候補の開発を断念するという難しい決断を迫られたにもかかわらず、この分野への投資と研究の開拓を継続してきました。バイオジェンは、必要とする患者さんに治療薬をお届けする可能性を高めることを目標に、遺伝性およびその他のALSを対象とする当社の幅広い治療薬候補のポートフォリオにこれまでの大切な学びを活かしてきました。これらの活かされた学びには、特定の患者集団を対象に遺伝子的に検証されたターゲットを評価すること、各々のターゲットに最も適切なモダリティを追求すること、センシティブな臨床評価項目を採用すること、等が含まれます。

バイオジェン社について
1978年の創立以来、バイオジェンは世界をリードするバイオテクノロジー企業で、患者さんの人生を変革し、株主や私たちのコミュニティに価値をもたらす新薬をお届けするために革新的なサイエンスを開拓しています。
私たちは優れた治療アウトカムをもたらすファースト・イン・クラスの治療薬や治療法を推進するために、人類の生物学に対する深い理解を応用し、異なるモダリティを活用します。私たちは長期的な成長をもたらすために投資利益率のバランスを考慮した上で、果敢にリスクを取るというアプローチを採択しています。

投資家の皆さんにとって重要な情報についてはバイオジェンのウェブサイトwww.biogen.comに定期的に掲載しています。当社のSNS媒体Facebook, LinkedIn, X, YouTubeもご覧ください。

参考文献
  1. Brown CA, Lally C, Kupelian V, Flanders WD. Estimated Prevalence and Incidence of Amyotrophic Lateral Sclerosis and SOD1 and C9orf72 Genetic Variants. Neuroepidemiology. 2021;55(5):342-353. doi: 10.1159/000516752. Epub 2021 Jul 9.
  2. QALSODY Prescribing Information, Cambridge, MA: Biogen.
  3. National Institute of Neurological Disorders and Stroke. Amyotrophic Lateral Sclerosis (ALS). Available at: https://www.ninds.nih.gov/health-information/disorders/amyotrophic-lateral-sclerosis-als. Accessed: April 2023.
  4. Akcimen F, Lopez ER, Landers JE, et al. Amyotrophic lateral sclerosis: translating genetic discoveries into therapies. Nat Rev Genet. 2023. https://doi.org/10.1038/s41576-023-00592-y
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