本資料は、米バイオジェン社が 2024年2月23日(現地時間)に発表したプレスリリースの日本語訳として発表させていただくものです。内容につきましては原本である英文が優先します。

 

バイオジェンのQALSODY® (トフェルセン)、希少な遺伝型のALSに対する初の治療薬としてCHMPが肯定的見解を採択

  • SOD1-ALSは非常に深刻で、一貫して致命的で、極めて稀な遺伝型のALSで、欧州での罹患者は1,000人未満1
  • QALSODYにより、バイオジェンはALS領域の創薬をさらに促進する可能性のあるニューロフィラメントの役割に対する研究を推進

マサチューセッツ州ケンブリッジ: 2024年2月23日: バイオジェン(NASDAQ略称BIIB)は、欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会(CHMP)が、スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子変異を有する成人の筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬QALSODY®(トフェルセン)について、特例的な状況下での販売承認を推奨する肯定的見解を採択したことを発表しました。欧州委員会(EC)により承認されれば、QALSODYは運動ニューロン疾患(MND)としても知られるALSに対し、遺伝的原因を標的とする治療薬として欧州連合(EU)で初めて承認されることになります。

バイオジェンの開発部門責任者である、プリヤ・シンハル(Priya Singhal, M.D., M.P.H.)は次のように述べています。「CHMPの肯定的見解はQALSODYがSOD1-ALS にもたらすインパクトを強固に示すものであり、ALSや神経筋疾患の患者さんのアンメットニーズに対するバイオジェンのコミットメントをより強く表すものです。私たちはSOD1-ALSの臨床試験でニューロフィラメントが果たす役割について新たな知見を導く一助となれることを誇りに思うとともに、ALSコミュニティのために研究の推進に献身的にご協力いただいたSOD1-ALSの患者さん、ご家族の皆さん、そして治療研究に携わった関係者の皆さんに心より感謝いたします」。

QALSODYを推奨するCHMPの見解は、標的に対する作用機序、バイオマーカー、臨床データを含むエビデンス全体に基づきます。28週間の臨床第III相VALOR試験において、QALSODYを投与された被験者群ではプラセボ群と比較して血漿ニューロフィラメント軽鎖(NfL)の60%減少が認められ、ニューロン損傷の軽減が示唆されました。ALS機能評価スケール改訂版(ALSFRS-R)で評価された身体能力は、プラセボ群と比較してQALSODY投与群において改善の傾向が認められました。QALSODY投与を受けた被験者の10%以上に発現し、プラセボ群より多く発現した主な副作用は、疼痛、疲労、発熱、関節痛、筋肉痛、および白血球数と脳脊髄液中のタンパク質の増加でした。脊髄炎および/または神経根炎;乳頭浮腫および頭蓋内圧亢進;を含む重篤な神経学的イベントおよび無菌性髄膜炎も報告されています。

ベルギーのルーバン大学病院の神経学教授および神経筋リファレンス・センター長のフィリップ・ヴァン・ダーム博士 (Philip Van Damme, M.D., Ph.D.)は次のように述べています。「QALSODYの承認を支持するCHMPの推奨は欧州のALSに関わるコミュニティにとって新たな希望です。これはALSコミュニティ全体にとって大きなマイルストーンであり、私たちは初めて軸索損傷と神経変性のマーカーであるニューロフィラメントの持続的減少を導く治療薬を手にしたのです。QALSODYの開発プログラムは臨床試験デザインやバイオマーカーの使用に関する重要な学びを提供してくれましたが、これはこの領域全体を前進させてくれるものです」。

特例的な状況下での販売承認は、ベネフィット/リスク評価は肯定的と判断されながら、疾患の希少性により通常の使用状況では包括的データを取得することが困難な場合に推奨されるものです。QALSODYに対するCHMPの推奨は今後ECで欧州連合における販売承認が検討され、2024年第2四半期に決定が下される見込みです。

QALSODY® (トフェルセン)について

QALSODY®はアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)で、SOD1タンパク質の生成を抑制するためにSOD1 mRNAに結合するように設計されています。米国食品医薬品局はスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子変異を有する成人の筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬としてのQALSODYについて、迅速承認の対象に指定しました。この適応症はQALSODYの治療を受けた被験者群で血漿ニューロフィラメント軽鎖(NfL)の減少が認められたことに基づいて、迅速承認制度の下で承認されました。本適応症に対する承認が継続されるためには検証試験により臨床的ベネフィットを証明することが必要です。2

バイオジェンは開発提携およびライセンス契約によりQALSODYをアイオニス・ファーマシューティカルズ社から導入しました。QALSODYはアイオニス社により創薬されました。

QALSODYについては現在進行中の第III相VALOR試験のオープンラベル延長試験(OLE)に加え、臨床第III相無作為化プラセボ対照ATLAS試験も進行中で、これはSOD1遺伝子変異を有する発症前の方にQALSODYの投与を開始することで臨床的症状の発現を遅らせることができるかどうか、そして疾患活動性(血漿NfLの上昇)のバイオマーカーとしてのエビデンスを評価するための試験です。ATLAS(NCT04856982)に関する詳細は clinicaltrials.gov に掲載されています。

筋萎縮性側索硬化症とSOD1-ALSについて
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、随意筋の運動をコントロールする脳と脊髄における運動ニューロンの喪失をもたらす希少かつ進行性で死に至る神経変性疾患です。ALSは患者さんに筋力の低下と委縮をもたらし、徐々に運動、発話、摂食の能力を喪失させ、最終的には呼吸することもできなくなり、自立を奪います。ALS患者さんの平均余命は症状の発現後3年から5年です。3

複数の遺伝子がALSの発症に関わっています。遺伝子検査により、ALSの家族歴がなくとも遺伝子変異に関係するタイプのALSであるかどうかを判断することができます。SOD1遺伝子変異は、全世界のALSの推計罹患者数16万8000人の約2%に関わっています(SOD1-ALS)1。ALS患者のうち15%以上の方々が遺伝子変異によるものと考えられていますが4、その中にはALSの家族歴が知られていない場合があります1

SOD1-ALSの患者さんは、身体にSOD1 遺伝子変異によるSOD1タンパク質の有害な誤った折り畳みを生じます。この有害なタンパク質が運動ニューロンの変性を発現させ、進行性の筋力の低下、機能の喪失、そして最終的には死亡を招きます4

バイオジェンのALSへの継続したコミットメント
バイオジェンは10年以上にわたりあらゆる形のALSへの理解を深めるための研究の推進に邁進してきました。当社は2013年に開発後期段階のALS治療薬候補の開発を断念するという難しい決断を迫られたにもかかわらず、この分野への投資と研究の開拓を継続してきました。バイオジェンは、必要とする患者さんに治療薬をお届けする可能性を高めることを目標に、遺伝性およびその他のALSを対象とする当社の幅広い治療薬候補のポートフォリオにこれまでの大切な学びを活かしてきました。これらの活かされた学びには、特定の患者集団を対象に遺伝子的に検証されたターゲットを評価すること、各々のターゲットに最も適切なモダリティを追求すること、センシティブな臨床評価項目を採用すること、等が含まれます。QALSODYに加えて、バイオジェンはBIIB105を含めALSを対象に開発されている治療薬候補のバイプラインを有しています。

バイオジェン社について
1978年の創立以来、バイオジェンは世界をリードするバイオテクノロジー企業で、患者さんの人生を変革し、株主や私たちのコミュニティに価値をもたらす新薬をお届けするために革新的なサイエンスを開拓しています。
私たちは優れた治療アウトカムをもたらすファースト・イン・クラスの治療薬や治療法を推進するために、人類の生物学に対する深い理解を応用し、異なるモダリティを活用します。私たちは長期的な成長をもたらすために投資利益率のバランスを考慮した上で、果敢にリスクを取るというアプローチを採択しています。

投資家の皆さんにとって重要な情報についてはバイオジェンのウェブサイトwww.biogen.comに定期的に掲載しています。当社のSNS媒体Facebook, LinkedIn, X, YouTubeもご覧ください。

参考文献
  1. Brown CA, Lally C, Kupelian V, Flanders WD. Estimated Prevalence and Incidence of Amyotrophic Lateral Sclerosis and SOD1 and C9orf72 Genetic Variants. Neuroepidemiology. 2021;55(5):342-353. doi: 10.1159/000516752. Epub 2021 Jul 9.
  2. QALSODY Prescribing Information, Cambridge, MA: Biogen.
  3. National Institute of Neurological Disorders and Stroke. Amyotrophic Lateral Sclerosis (ALS). Available at: https://www.ninds.nih.gov/health-information/disorders/amyotrophic-lateral-sclerosis-als. Accessed: April 2023.
  4. Akcimen F, Lopez ER, Landers JE, et al. Amyotrophic lateral sclerosis: translating genetic discoveries into therapies. Nat Rev Genet. 2023. https://doi.org/10.1038/s41576-023-00592-y
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