- SOD1-ALSは希少な遺伝性ALSであり、米国で約330人の患者数と推定される1。進行性の疾患であり、日常的な機能が失われてほぼ死に至る。
- 承認されれば、トフェルセンは遺伝性ALSを対象とした初の治療薬となる。
- 申請に含まれる12カ月のデータによると、より早期にトフェルセンを投与することで運動機能、呼吸機能、筋力およびQOLの低下を抑制させることが示されている。
米マサチューセッツ州ケンブリッジ、2022年7月26日(米国時間)– バイオジェン(NASDAQ略称BIIB)は、 米国食品医薬品局(FDA)が、スーパーオキサイドジスムターゼ1遺伝子変異を有する筋萎縮性側索硬化症(SOD1-ALS)の治療薬候補のアンチセンス医薬品 トフェルセン の新薬承認申請(NDA)を受理したことを発表しました。本申請は、優先審査(Priority Review)の指定を受け、PDUFA(Prescription Drugs User Fee Act)アクション・デート(審査終了目標日)は2023年1月25日に定められました。FDAはまた、本申請について、日程は未定ながら、諮問委員会の開催を検討していることに言及しました。ALS患者さんの平均余命は症状の発現後3~5年と言われています。現在のところ、SOD1-ALSに対する治療薬はありません2。
Head of Global Safety & Regulatory Sciences and interim Head of Research & DevelopmentであるPriya Singhal, M.D., M.P.H.は次のように述べています。「私たちが得たデータによるとトフェルセンはSOD1-ALS患者さんに意義ある変化をもたらす可能性があります。FDAの迅速承認制度により審査いただけることで、この致死的な神経変性疾患とともに生きる患者さんにより早くトフェルセンをお届けすることができるようになります。承認されればトフェルセンは遺伝性ALSに対する初の治療薬となり、これによりこの過酷な疾患に対するさらなる治療薬開発につながる道を拓くことを望みます」。
バイオジェンは、臨床効果をかなりの確率で予測するとされるサロゲートバイオマーカーであるニューロフィラメントのデータに基づき、FDAの迅速承認制度のもとで承認を目指しています。ニューロフィラメントは健康な神経に見られる通常のタンパク質であり、神経あるいは軸索に損傷が起こると血中および脳脊髄液中で増加し、神経変性のマーカーとなります。ALSにおいては、より高いレベルのニューロフィラメントが臨床機能のより急速な低下や生存期間短縮の予測因子となることが分かっています3。トフェルセンの試験結果はニューロフィラメントの減少が先だって起こることで、臨床機能、呼吸機能、筋力およびQOLの低下の抑制を予測できることを示しています。バイオジェンはさらなるデータの解析や検証的データパッケージの最終化をFDAとともに進めています。
VALOR試験の治験責任医師でワシントン大学医学部セントルイス校ALSセンター長のティモシー・ミラー, M.D., Ph.D. (Timothy Miller, M.D., Ph.D.)は次のように述べています。「12カ月の試験データによれば、より早くトフェルセンの投与を受けたSOD1-ALSの患者さんにおいて、臨床機能、呼吸機能、筋力およびQOLの低下が緩やかになることが示唆されました。これらはこの厳しい疾患とともに生きる患者さんにとって非常に重要な指標です。私のクリニックのSOD1-ALS患者さんにとって、トフェルセンは疾患の急速な進行を有意に遅らせ、彼らの人生に大きな影響を与えるかもしれません」。
トフェルセンのNDAには、健常者に対する第I相試験結果、用量設定を評価した第I/II相試験、第III相VALOR試験、およびオープンラベルの延長試験(OLE)が含まれます。さらに、欧州ALS治療学会(ENCALS)年次総会で発表された、統合された最新のVALOR試験とOLE試験の12カ月の結果も含まれています。
2021年10月に報告したとおり、第III相無作為化VALOR試験の6カ月のデータにおいて、ALS機能評価スケール改訂版(ALSFRS-R)でのトータルスコアの28週でのベースラインからの変化量という主要有効性評価項目を達成することができませんでした。しかしながら、複数の副次評価項目および探索評価項目において病気の進行を抑制する傾向が見られました。統合された12カ月のデータによると、トフェルセンをより早期に投与することで、神経変性のマーカーであるニューロフィラメントの持続的な減少につながり、複数の有効性の評価項目にわたって機能低下を抑制しました。
12カ月のVALOR試験およびOLE試験において、大部分の有害事象(AE)は、頭痛、処置痛、転倒、腰痛および四肢痛でした。VALOR試験およびOLE試験での大部分のAEの重症度は軽症から中等症でした。脊髄炎、神経根炎、無菌性髄膜炎、乳頭浮腫といった深刻な神経学的イベントが、トフェルセンのVALOR試験およびOLE試験への参加者の6.7%において報告されました。
FDAの審査期間中、バイオジェンは12カ国以上において実施しているトフェルセンの早期アクセスプログラム(EAP)を継続します。オープンラベル延長試験ならびに、SOD1遺伝子変異を有する発症前の被験者を対象とする第III相ATLAS試験も継続します。バイオジェンは精力的に各国の規制当局ともやりとりを行っており、適切な時期が来れば報告を行います。
トフェルセンについて
トフェルセンはSOD1-ALSの治療薬候補として開発中のアンチセンス医薬品です。トフェルセンはSOD1メッセンジャーリボ核酸(mRNA)に結合し、RNase-Hによる分解を促してSOD1タンパクの合成を減少させます。トフェルセンについては臨床第III相ATLAS試験も進行中で、これはSOD1遺伝子変異を有する発症前の方にトフェルセンの投与を開始することで臨床的症状の発現を遅らせることができるかどうか、そして疾患活動性を測定するバイオマーカーとしてのエビデンスを評価するために設計された試験です。バイオジェンは開発提携およびライセンス契約によりトフェルセンをIonis Pharmaceuticals, Inc. (アイオニス・ファーマシューティカルズ)社から導入しました。
筋萎縮性側索硬化症とSOD1-ALSについて
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、随意筋の運動をコントロールする脳と脊髄における運動ニューロンの喪失をもたらす希少かつ進行性で死に至る神経変性疾患です。ALSは患者さんに筋力の低下と萎縮をもたらし、徐々に運動、発話、摂食の能力を喪失させ、最終的には呼吸することもできなくなり、自立を奪います。ALS患者さんの平均余命は症状の発現後3年から5年です2。
複数の遺伝子がALSの発症に関わっています。SOD1遺伝子変異はALSの全世界での症例数約168,000人の約2%を占めています (SOD1-ALS)1。SOD1-ALS患者さんの余命は個人差があり、中には1年未満で死に至る方もおられます4.
バイオジェンのALSへのコミットメント
バイオジェンは10年以上にわたりALSへの理解を深めるために、研究の推進に邁進してきました。当社は2013年に開発後期段階のALS治療薬候補の開発を断念するという難しい決断を迫られたにもかかわらず、この分野への投資と研究の開拓を継続してきました。バイオジェンは、必要とする患者さんに治療薬をお届けする可能性を高めることを目標に、遺伝性およびその他のALSを対象とする当社の幅広い治療薬候補のポートフォリオにこれまでの大切な学びを活かしてきました。これらの活かされた学びには、特定の患者集団を対象に遺伝子的に検証されたターゲットを評価すること、各々のターゲットに最も適切なモダリティを追求すること、センシティブな臨床評価項目を採用すること、等です。現在、バイオジェンは、ALSを対象に開発されているトフェルセンやBIIB105をはじめとする幅広い治療薬候補のパイプラインを有しています。
バイオジェンについて
神経科学領域のパイオニアであるバイオジェンは、最先端の医学と科学を通じて、重篤な神経学的疾患、神経変性疾患の革新的な治療法の発見および開発を行い、その成果を世界中の患者さんに提供しています。1978年にチャールズ・ワイスマン、ハインツ・シェイラー、ケネス・マレー、ノーベル賞受賞者であるウォルター・ギルバートとフィリップ・シャープにより設立されたバイオジェンは、世界で歴史のあるバイオテクノロジー企業のひとつです。バイオジェンは多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、脊髄性筋萎縮症の最初の治療薬を製品化し、アルツハイマー病の病理に作用する最初で唯一の治療薬を提供しています。また、生物製剤の高い技術力を活かしてバイオシミラーの製品化を行い、業界内で最も多様な神経科学領域のパイプラインに注力し、進展させており、アンメットニーズが高い疾患領域の患者さんの治療水準に変化をもたらしています。
2020年、バイオジェンは、気候、健康、公平さが深く相互に関連する課題に対して、20年間に2億5000万ドルを投資する大規模な取組みを開始しました。Healthy Climate, Healthy Lives ™は、ビジネス全体で化石燃料の使用をゼロにし、著名な研究機関とのコラボレーションを構築して科学研究を進展させ、人類の健康を改善し、発展途上のコミュニティをサポートすることを目的としています。
バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体Twitter, LinkedIn, Facebook, YouTubeをご覧ください。
- Brown CA, Lally C, Kupelian V, Flanders WD. Estimated Prevalence and Incidence of Amyotrophic Lateral Sclerosis and SOD1 and C9orf72 Genetic Variants. Neuroepidemiology. 2021
- Brown RH, Al-Chalabi A. Amyotrophic Lateral Sclerosis. N Engl J Med. 2017 Jul 13
- Thompson AG et al. Multicentre appraisal of amyotrophic lateral sclerosis biofluid biomarkers shows primacy of blood neurofilament light chain. Brain Commun. 2022;4(1):fcac029. Published 2022 Feb 9. doi:10.1093/braincomms/fcac029
- Bali T, et al. Defining SOD1 ALS natural history to guide therapeutic clinical trial design. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2017 Feb