本資料は、米バイオジェン社が 2018年10月11日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語訳として発表させていただくものです。よって必ずしも日本の状況を反映したものでないことをご了承ください。内容につきましては原本である英文が優先します。

 

バイオジェン、多発性硬化症患者さんの治療成果を改善する研究を推進

  • 血清ニューロフィラメント・ライト(SNFL)が多発性硬化症(MS)において臨床上有用なバイオマーカーとなりうることを裏付けるエビデンスを発表;バイオジェンとSIEMENS HEALTHINEERSがSNFL血液検査を共同開発
  • リアルワールドデータにより、テクフィデラとタイサブリの長期有効性を裏付けるエビデンスを、新たに診断された患者さんを含めて増強
  • 13,000名以上のMS患者さんから標準化データを収集したMS PATHSで、認知機能の変化を客観的にモニターするために新規ツールを使用

米マサチューセッツ州ケンブリッジ [2018年10月11日]-バイオジェン(Nasdaq:BIIB)は、研究開発活動を通じて、MS(多発性硬化症:multiple sclerosis、以下MS)の疾患としての進行をマネジメント・モニタリングするための新たな手法を確立すること、ならびに医師にリアルワールドエビデンスを提供して治療上の判断に役立てていただくことを目指しています。 今回発表したデータによると、血清ニューロフィラメント・ライト(sNfL)が、疾患の活動性と治療効果を測定できるバイオマーカーとなる可能性があります。さらに、MS PATHS (Multiple Sclerosis Partners Advancing Technology and Health Solutions)の結果は、認知機能の変化などの臨床的に重要なアウトカムを幅広くモニターするためにテクノロジーを使用する意義があることを示しています。また、進行中の試験の新たな解析により、テクフィデラ® (フマル酸ジメチル)とタイサブリ® (ナタリズマブ)を疾患の早期治療に使用することの長期的ベネフィットが継続して裏付けられています。こうした知見は、ドイツのベルリンで開催されたECTRIMS(第34回欧州多発性硬化症会議(10月10日~12日)で発表されました。

バイオジェンの研究開発部門のエグゼクティブバイスプレジデントのマイケル・エーラーズは次のように述べています。「バイオジェンは、本疾患への理解を深めるため、MSへの投資および研究開発の追求にコミットし続けています。私たちが構築しつつあるデータは、日々の臨床診療のための新たなツールの開発につながっています。このデータは、患者さんの治療アウトカムを改善するための個別化された治療方針決定に役立つ情報となるでしょう」。

バイオマーカーがMS治療の判断の指針となる可能性
バイオジェンは、sNfLを評価するための研究に取り組んでいます。sNfLは神経損傷を反映するたんぱく質であり、疾患活動性のバイオマーカーとして、MS患者さんの血中で上昇します。1,000名以上の患者さんのレトロスペクティブ解析の結果は、血中sNfLレベルがMS患者さんの疾患重篤度予想および治療反応のモニターと臨床的に関連していることを裏付けています。sNfLレベルが一定の閾値を上回ると、現行の疾患活動性および障害の進行や脳萎縮などネガティブな臨床・放射線検査アウトカムに関連することがデータに示されています。また、疾患修飾薬の導入によってsNfLレベルが有意に下がること、および減少幅が大きいほど治療アウトカムも大きく改善するということも研究者らにより示されました。

Johns Hopkins University School of Medicineの神経免疫学・神経感染症部門のディレクターであるPeter Calabresi, M.D.は次のように述べています。「現在、MSにおける治療モニタリングのための血液バイオマーカーは存在しません。今回の知見により、sNfLが臨床的に有用なバイオマーカーであり、MS患者さん個人の病状が急速に進行するか、あるいは緩慢な経過をたどるかを予測することに役立つことが確認されました。また、今回の知見は、簡便な血液検査によって特定の疾患修飾薬に対する患者さんの反応性をモニターする可能性を広げます。sNfLが確かな予測力を備えていることは、現在MRIによって測定された情報のみにより治療判断を行っている医師に、さらなる情報が提供されることになります」。

バイオジェンは、こうした結果を、実臨床での診療にとって潜在的に価値のあるリソースに変えるべく努力しており、Siemens Healthineersとの協力関係を拡大し、MSをモニターするための新たなツールとしてのsNfL血液検査を開発しています。高感度で、高精度で有用な分析・検査法により、医師はMS患者さんの血中sNfLレベルの測定が可能になり、医師は疾患活動性を知り、治療反応のモニタリングを改善することができるようになります。

リアルワールドエビデンスがテクフィデラとタイサブリの長期的有効性をさらに強固に
バイオジェンは、実臨床における意思決定を助け、患者さんのケアを最適化するためにも、リアルワールドエビデンスが重要であると理解しています。MSの早期段階から治療開始することを含めた、治療によるベネフィットをより理解するため、バイオジェンのMS疾患修飾薬であるテクフィデラとタイサブリの評価を継続しています。

ENDORSE試験の結果によれば、テクフィデラの継続的使用により、9年間にわたってそのベネフィットが継続したことが示されました。タイサブリによる治療を受けている患者さんを対象とした、進行中のリアルワールドスタディとして最大の「タイサブリ観察プログラム(TOP: TYSABRI Observational Program)」の解析では、10年間にわたるタイサブリの長期安全性と一貫した有効性が示されました。

新テクノロジーがMSのモニタリングとマネジメントを支援
欧米の主要10カ所のMSセンターとの共同研究であるMS PATHSを通じ、バイオジェンは、日常診療においてテクノロジーを駆使して、患者さんの臨床データ、MRIデータ、生物学的データを診療現場からリアルタイムに収集し続けています。iPadをベースとした評価を利用し、研究者らは、運動・視覚・認知機能の変化を幅広くモニターすることができます。認知機能の低下は、MS患者さんの半数以上に認められますが、日常診療において定期的に評価されておらず、定量化が困難です1。新たなMS PATHSのデータによると、MS患者さんにおいて、認知機能の低下は身体機能の低下同様に幅広く見られますが、身体症状とは独立して起こります。こうした結果は、日常診療における認知機能モニタリングの重要性、およびMSの認知症状に対する効果的な治療戦略の必要性を強く示唆するものです。

MS PATHSのネットワークに入っていない医師にも容易に認知機能評価ができるよう、バイオジェンは、「CogEval」を開発しました。これは米国、欧州、カナダ、日本、オーストラリア、ニュージーランドの医療関係者が入手可能な無料アプリです。MS PATHSで使用されている「処理速度検査」と同じく、「CogEval」は多くの専門家がMS認知機能検査のゴールデン・スタンダードと認めている「符号・数字モダリティー検査(Symbol Digit Modalities Test)」をモデルとし、同検査との同等性を検証しております。「CogEval」はiPadベースの認知機能評価を2分間で実行できます。この評価は、注意力、精神運動速度、視覚処理、ワーキングメモリーに依存しています。

バイオジェンのエグゼクティブ・バイス・プレジデント兼チーフ・メディカル・オフィサーのアルフレッド・サンドロック M.D., Ph.D.は次のように述べています。「MS PATHSを通じて、バイオジェンはテクノロジーを日常診療と融合させ、MSの機能的能力を幅広くモニターしています。中でも認知機能は、患者さんの日常生活における疾患進行の臨床的に重要な症状です。私たちは、このテクノロジーを、MS PATHSのネットワークに入っていない医師にも提供できる「CogEval」アプリのような革新的ソリューションの開発を行い、提供できることをうれしく思います。これにより、医師は臨床診療において、認知機能の評価をより容易に行うことができるようになるでしょう」。

テクフィデラ®について
テクフィデラは、MS(海外においては再発性MS、再発寛解型MS(RRMS)を含む)の経口治療薬です。これまで全世界で340,000人以上の患者さんがテクフィデラによる治療を受け、臨床試験および実処方データによると患者年625,000の経験を有しています2。臨床試験において最も多く見られたテクフィデラに関連する有害事象は、顔面潮紅および消化管(GI)イベントでした。その他の副作用としては、治療開始後1年間における平均リンパ球数の減少(1年経過後は横ばい)、肝機能異常(投与中止によって消失)などがあります。テクフィデラは、フマル酸ジメチルまたはテクフィデラを含む添加剤に対する既知の過敏症を有する患者には禁忌です。中等度から重度の長期るリンパ球減少を有するテクフィデラ投与患者では、死亡や重度障害になる可能性のある、まれな頻度で脳に見られる日和見ウイルス感染症である進行性多巣性白質脳症(PML)が確認されています。医師にはPMLのリスクマネジメントとして、リンパ球数をモニターするようガイダンスが行われています。

テクフィデラの有効性および安全性は、進行中の長期延長試験を含むグローバルな大規模臨床プログラムで調査されています。

タイサブリ®について
タイサブリは、米国、欧州連合(EU)、カナダ、オーストラリア、スイスなど80ヵ国以上で承認されている疾患修飾薬です。米国においてタイサブリは、再発性MS患者の治療のための単剤療法の適応が承認されています。欧州連合で同剤は、疾患修飾薬を1回以上使用した完全かつ十分な一連の治療を受けているにも関わらず疾患活動性が高い患者、または急速に進展する重度のRRMSを有する患者のための、疾患活動性が高いRRMSを有する成人患者に単剤投与する疾患修飾薬としての適応が承認されています。タイサブリは、RRMS治療における10年間の経験、世界中の投与患者190,800人以上、患者年658,169人という経験を有し、その有効性が確立されています3

タイサブリは、α4インテグリンに選択的に結合するモノクローナル抗体薬であり、α4β1インテグリンと血管細胞接着分子-1との相互作用を遮断することにより、MS患者の炎症細胞の活性化を抑制すると考えられています。これらの分子相互作用が遮断されると、白血球は内皮を通過して炎症を起こした実質組織へ移動することができなくなります。タイサブリがMS患者において有効性を発揮する具体的なメカニズムは、完全には解明されていません。

タイサブリは、PML(死亡または重度障害の原因となるまれな日和見ウイルス感染症)のリスクを高めます。PMLのリスクを増大させるリスク因子は、抗JCウイルス抗体の存在、過去における免疫抑制薬の使用、長期間にわたるタイサブリ投与です。3つのリスク因子すべてを有する患者は、PMLを発症するリスクが最も高くなっています。タイサブリは単純ヘルペスウイルスおよび水痘帯状ヘルペスウイルスに起因する脳炎および髄膜炎の発症リスクを高め、市販後に臨床的に重大な肝障害も報告されています。タイサブリを市販後投与したMS患者では、重篤な症例、生命を脅かす症例、時には致死的な症例が報告されています。タイサブリ投与を受けた患者に認められたその他の重篤な有害事象としては、過敏反応(アナフィラキシーなど)、および感染症(日和見感染症、その他の非定型感染症など)などがあります。また、市販後に臨床的に重大な肝障害も報告されています。

バイオジェンについて
神経科学領域のパイオニアであるバイオジェンは、最先端の医学と科学を通じて、重篤な神経学的疾患、神経変性疾患の革新的な治療法の発見および開発を行い、世界中の患者さんに提供しています。1978年にチャールズ・ワイスマン、ノーベル賞受賞者であるウォルター・ギルバートとフィリップ・シャープらにより設立されたバイオジェンは、世界で最も歴史のあるバイオテクノロジー企業の一つであり、多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、脊髄性筋萎縮症の唯一の治療薬を製品化しました。また、アルツハイマー病、神経免疫疾患、運動性疾患、神経筋障害、痛み、眼科、神経精神医学といった神経領域の研究においても最先端の活動を展開しています。生物製剤の高い技術力を活かし、バイオジェンは高品質のバイオシミラーの製造と製品化にも注力しています。

当社に関する情報については、https://www.biogen.com およびSNS媒体Twitter, LinkedIn, Facebook, YouTubeをご覧ください。

参考文献
  1. Multiple Sclerosis International Federation (MSIF). 2013. MS in focus: MS and cognition. Available at: https://www.msif.org/wp-content/uploads/2014/09/MS-in-focus-22-Cognition-English1.pdf. Last accessed: Sept. 25, 2018.
  2. Combined post-marketing data based on prescriptions and clinical trials exposure to TECFIDERA as of 31 July 2018.
  3. Global Natalizumab (TYSABRI) Postmarketing PML Update, August 2018.  
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