本資料は、米バイオジェン社が 2017年6月1日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語訳として発表させていただくものです。よって必ずしも日本の状況を反映したものでないことをご了承ください。内容につきましては原本である英文が優先します。

 

ヌシネルセンEUで初の脊髄性筋萎縮症(SMA)治療薬として承認

幅広いSMAの適応症で承認
第III相試験からの豊富なデータが、運動マイルストーンのポジティブな効果を示す
SMAの乳幼児の生存率が向上

マサチューセッツ州ケンブリッジ – 2017年6月1日 – バイオジェン(NASDAQ略称:BIIB)は、本日、欧州委員会(EC)がSPINRAZA® (一般名:ヌシネルセン)を5q脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療薬として承認したことを発表しました1。5qSMAは、この疾患の最も多く見られるタイプであり、全てのSMA症例の約95%を占めています2

ヌシネルセンは欧州連合(EU)で初めて承認されたSMA治療薬です。SMAは乳幼児の死亡の主要な遺伝的原因のひとつであり、進行性で筋力の低下を特徴としています。ヌシネルセンの審査は、治療法がない患者さんにできるだけ速やかに提供できるよう、欧州医薬品庁(EMA)の迅速審査プログラムの下で行われました。

バイオジェンのミシェル・ヴォナッソス最高経営責任者(CEO)は次のように述べています。「本日、私たちはSMAに苦しむ欧州全域の患者さん及びご家族と共に、ヌシネルセンが承認されたことを祝します。臨床試験で示された有効性と安全性のプロファイルに基づき、私たちは、ヌシネルセンが、この重篤な疾患を抱える乳幼児、小児、成人に有意義な影響を与えることになると信じています。SMAに苦しむ人々の生活と人生を変えるという当社のミッションの一環として、私たちは、ヌシネルセンの恩恵を享受するはずの人々が確実に、かつ速やかに、この治療薬にアクセスできるよう、医療関係者、患者支援団体、および政府機関との密接な協調を続けていきます」。

ヌシネルセンが今回承認に至ったのは、基本的に2つの多施設共同比較対照試験の結果に基づくものです。具体的には、ENDEAR試験(乳児型SMA)の終了時データおよびCHERISH試験(遅発型SMA)の中間解析データであり、いずれの試験においても、ヌシネルセンの臨床的に有意義な有効性、および忍容可能な安全性プロファイルが示されています。また、今回の承認にあたっては、発症前および1型、2型、3型SMAの症状がある、または発症の可能性がある患者さんを対象とした非盲検試験データも参考情報として使われています。

ENDEAR試験の最終解析においては、シャム対照群(0%)と比べ、ヌシネルセン群(51%)で統計学的に有意に高い運動マイルストーンを達成しました。(p<0.0001)。ヌシネルセン群の中には、頭を上げる、寝返る、座る、立つなどの運動マイルストーンを達成した乳幼児もありました。さらに、ヌシネルセンによる治療を受けた乳幼児では、死亡または永続的な人工呼吸器の装着のリスクが統計的に有意な減少(47%)を示しました(p=0.0046)。

CHERISH試験の予め規定されていた中間解析では、ヌシネルセンによる治療を受けた遅発型SMA(2型または3型が発症する可能性が高い)の小児において、未治療児に比べて、運動機能の統計的に有意、かつ臨床的に有意義な改善がありました。改善は「ハマースミス機能的運動評価尺度拡大版」(HFMSE)によって測定されました。その結果、ベースラインから15カ月までの平均変化においてHFMSE で5.9ポイントの向上が示されました(p=0.0000002)。HFMSEはSMAの小児の運動機能を評価するために特に設計された、信頼できる有効なツールです。この第III相試験終了時データには上記の中間解析との一貫性があり、2017年4月に米マサチューセッツ州ボストンで開催された米国神経学会(AAN)の年次会議で発表されました。

独フライブルグ大学医療センターのヤン・キルシュナー教授は次のように述べています。「全般的な臨床的知見は、広範な患者さんにおけるヌシネルセンの有効性と安全性を裏付けるものです。具体的には、乳幼児における運動機能発達の有意な改善や死亡リスクの低減などです。こうした前例のない改善により、これまで経時的な運動機能の喪失に対して使用できる承認された治療薬がなかった患者コミュニティに新たな希望がもたらされます。私たちは、ヌシネルセンによる運動機能の改善を目の当たりにしつつありますが、これは従来の治療薬がなかった頃からは考えられないことです」。

ヌシネルセンの投与は髄腔内注射によって実施する必要があります。これは、治療薬を脊髄周囲の脳脊髄液(CSF)中に直接送達するものです3。SMA患者の脊髄では、サバイバルモーターニューロン(SMN)タンパク質の発現レベルが不十分なため、運動ニューロンが変性しています4

ヌシネルセンは好ましい安全性プロファイルを示しました。皮下注射または静脈注射により投与された他のアンチセンス・オリゴヌクレオチドでは、血小板減少症、腎毒性、および凝固異常(急性重症血小板減少症を含む)が観察されています。腰椎穿刺手順の一部として有害な反応が起きるリスクがあります(例:頭痛、背部痛、嘔吐など)。

EUにおけるヌシネルセン発売のタイミングは国ごとの保険償還やアクセスのプロセスによって異なります。バイオジェンはEU全域の保険制度や政府機関に働きかけて患者さんがヌシネルセンを確実にアクセスできるよう調整を進めています。

ヌシネルセンプログラムのアップデート
ヌシネルセンは2016年12月23日、米国の食品医薬品局(FDA)によって初めて承認されました。承認申請から3カ月未満の時点でした。バイオジェンは承認申請を日本、カナダ、オーストラリア、スイス、ブラジルでも提出しており、2017年にはそれ以外の国でも申請を始める予定です。

バイオジェンはアンチセンス治療薬のリーダーであるIonis Pharmaceuticals社 (NASDAQ略称: IONS、発音:アイオニス)からヌシネルセンを開発・製造・商業化する権利をライセンスしています。バイオジェンとIonis社は革新的な臨床開発プログラムを実施することでヌシネルセンを2011年のヒトへの初投薬から5年で最初の承認を獲得しました。今回のECによるヌシネルセン承認に基づき、Ionisはマイルストーンとして5,000万ドルの支払いを受けることになります。Ionis社にはヌシネルセンの世界売上に対する段階的ロイヤルティとして最大15%前後を受け取る権利があります。

SMA 5-9について
SMAは、脊髄および下位脳幹における進行性の運動ニューロンの脱落を特徴とする疾患であり、重篤で進行性の筋萎縮や筋無力を引き起こします。最も重篤なタイプのSMAの患者さんは最終的に麻痺状態となり、呼吸や嚥下など生命維持のための基本的な身体機能に支障をきたす恐れがあります。

SMN1(Survival of Motor Neuron 1)遺伝子の欠落または欠損により、SMAの患者さんは運動ニューロン維持に必要なSMNタンパク質を十分に産生することができません。SMAの重篤度はSMNタンパク質の量と相関関係があります。1型SMAの患者さんは最もきめ細やかな支持療法を必要としますが、SMNタンパク質がほとんど生成されないため、支えなしに座ることができず、呼吸器による補助なしに2年以上生存することができません。2型と3型の患者さんでは、より多くのSMNタンパク質が生成され重篤度も下がりますが、日々の生活と人生に困難を強いられます。

ヌシネルセンについて
ヌシネルセンはSMAの治療薬としてグローバルレベルで開発が進められています。

ヌシネルセンはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であり、5番染色体長腕(5q)内のSMN1遺伝子変異による SMNタンパク質欠損により引き起こされるSMAの治療薬として設計されました。本剤は変異したSMN1の重複遺伝子であるSMN2のスプライシングを変えるようデザインされています。その目的は完全に機能するSMNタンパク質の産生を増やすことにあります10。ASOは標的RNAと結合して遺伝子発現を調節するようデザインされた短鎖の合成ヌクレオチドです。このテクノロジーを使うことで、ヌシネルセンは機能的SMNタンパク質の量を増やす可能性を備えています。

バイオジェンについて
最先端の科学と医学を通じて、バイオジェンは重篤な神経学的疾患、神経変性疾患の革新的な治療法の発見および開発を行い、世界中の患者さんに提供しています。1978年に設立されたバイオジェンは、世界で歴史のあるバイオテクノロジー企業のパイオニアであり、多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、脊髄性筋萎縮症の唯一の治療薬を製品化しました(国内未承認)。また、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)といった神経領域の研究においても最先端の活動を展開しています。生物製剤の高い技術力を活かし、バイオジェンは高品質のバイオシミラーの製造と製品化にも注力しています。当社に関する情報については、https://www.biogen.com およびSNS媒体TwitterLinkedInFacebookYouTubeをご覧ください。

参考文献
  1. EMA SPINRAZA Summary of Product Characteristics (SmPC). May 2017.
  2. Farrar MA, Kiernan MC. The Genetics of Spinal Muscular Atrophy: Progress and Challenges. Neurotherapeutics; 2015; 12:290–302.
  3. Evers MM, Toonen LJ, van Roon-Mom WM. Antisense oligonucleotides in therapy for neurodegenerative disorders. Adv Drug Deliv Rev. 2015;87:90-103.
  4. Lunn MR, Wang CH. Spinal muscular atrophy. Lancet. 2008;371(9630):2120-2133.
  5. Darras B, Markowitz J, Monani U, De Vivo D. Chapter 8 - Spinal Muscular Atrophies. In: Vivo BTD, ed. Neuromuscular Disorders of Infancy, Childhood, and Adolescence (Second Edition). San Diego: Academic Press; 2015:117-145.
  6. Lefebvre S, Burglen L, Reboullet S, et al. Identification and characterization of a spinal muscular atrophy-determining gene. Cell.1995;80(1):155-165.
  7. Mailman MD, Heinz JW, Papp AC, et al. Molecular analysis of spinal muscular atrophy and modification of the phenotype by SMN2. Genet Med. 2002;4(1):20-26.
  8. Monani UR, Lorson CL, Parsons DW, et al. A single nucleotide difference that alters splicing patterns distinguishes the SMA gene SMN1 from the copy gene SMN2. Hum Mol Genet. 1999;8(7):1177-1183.
  9. Peeters K, Chamova T, Jordanova A. Clinical and genetic diversity of SMN1-negative proximal spinal muscular atrophies. Brain.2014;137(Pt 11):2879-2896.
  10. Hua Y, Sahashi K, Hung G, Rigo F, Passini MA, Bennett CF, Krainer AR. Antisense correction of SMN2 splicing in the CNS rescues necrosis in a type III SMA mouse model. Genes Dev. 2010 Aug 1; 24(15):16344-44.
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