多発性硬化症の患者さんの実態調査

進行性の疾患ゆえに、就労、今後の病状や経済的状況について不安を抱えている全国多発性硬化症友の会とバイオジェン・ジャパンが調査を実施

バイオジェン・ジャパン株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:鳥居慎一)は、世界多発性硬化症の日(World MS Day)*に先立ち、全国多発性硬化症友の会(会長:嶺岸禮三、以下、MS友の会)の協力を得て実施した患者さんの実態調査の結果を発表いたします。本調査は、MS友の会会員580名に対して郵送で調査を依頼し、2017年3月10日から5月8日までの間に回答があった210件について集計を行ったものです(有効回答数:210)。回答は多発性硬化症(MS)患者さん、視神経脊髄炎(NMO)**患者さんが含まれており、その比率はMSが77.1%、NMOが23.8%でした。

*世界多発性硬化症の日は、MS世界連合と世界各国のMS協会により、MSの認知度向上などを目的に2009年に制定された。 毎年5月の最終水曜日、2017年は5月31日。
**2015年の診断基準で定義される視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)を含めた広義の疾患群をNMOと表記した。

この調査の結果から、以下の課題があることが示されました。

  • 回答者の8割が今後の病状の進行や改善、経済的状況について不安を感じている
  • これまでにMS/NMOのために退職、転職、仕事内容の変更、就職をあきらめた経験のある人が多い(複数回答)
  • 最初にMS/NMOと思われる症状が現れてから、診断されるまでに平均3.7年、3つの医療機関を受診している

調査結果について
1)患者さんの不安
今回の調査で、回答した患者さんのうち8割が、「とても不安」「やや不安」をあわせて、「今後症状が改善するかどうか(83.4%)」、「今後の病気の進行(88.6%)」、「経済的な状況(79.0%)」に不安を感じていることがわかりました。

2)就労の課題
210名が複数回答で仕事について回答した結果を集計しました。(%は回答者を母数とした割合)
MS/NMOのために退職(72名(34.3%))、転職(29名(13.8%))、仕事内容の変更(46名(21.9%))、就職をあきらめた(41名(19.5%))と、就労に関しても大きな課題が浮き彫りになりました。
別の設問で、病気と診断されていることを周囲に伝えているかを尋ねたところ、職場や学校に伝えている人は36.2%という数字がでており、職場の理解を得て働いている人は半数に満たないことが示されています。

※MS/NMOのために仕事の内容が変更・異動、転職・退職を経験したことがあるか。(複数回答)

3)診断の難しさ
今回の調査で、最初に症状が現れてからMS/NMOと診断されるまでの期間と、診断されるまでに診察を受けた医療機関数を尋ねたところ、平均で3.7年、3つの医療機関にかかっていることがわかりました。診断の難しさを示しています。

今回の調査結果について、MS友の会会長の嶺岸禮三氏は次のように述べています。
「多発性硬化症は、症状が多様で診断が難しく、疾患としてもまだまだ理解が進んでいないのが現状です。今回の調査結果から、会員のMS/NMO患者さんが、進行性であるMS/NMOの治療を続けていくにあたり、病状が今後どのように進行するのかだけではなく、経済的なことや就労に関しても、不安と課題を抱えている実態が浮き彫りになりました。再発を予防し、進行を遅らせることができる治療薬を使うことで病状をコントロールし、就労を継続することも可能な時代になってきました。本調査結果を活用し、周囲への伝え方、配慮や協力を仰ぐことで、仕事ならびに自分自身が望む日常生活をいかに実現するかについて、会員とも協力しながら、患者さんの生活の質の向上を図りたいと考えます」。
バイオジェン・ジャパン株式会社の代表取締役社長の鳥居慎一は次のように述べています。
「多発性硬化症は進行性の疾患のため、早期診断と早期治療が必要です。しかしながら、患者さん、医師ともにまだ疾患への認識が十分ではないのが現状です。多発性硬化症の治療薬は進歩を続けており、早期診断・早期治療を行うことで、再発予防や病状の進行を抑制することも可能になってきました。新しい治療薬に関する情報提供をさらに強化し、新薬の開発にも注力することで、患者さんが症状をコントロールしつつ、仕事を続け、日常生活の質の向上をさらに図れるよう弊社としてもできる限りの努力を継続してまいります」。

多発性硬化症(MS)について
多発性硬化症は、深刻な慢性進行性神経疾患であり、認知機能、心理社会的機能及び身体機能の全てに影響を及ぼし、中枢神経系における炎症、ミエリン破壊、オリゴデンドロサイトの細胞死、軸索損傷及びその後の神経細胞の喪失を特徴とする自己免疫疾患です。多発性硬化症の有病率は人種間及び地域間で差があり、日本における推定有病率は欧米諸国の10%程度と報告されています1)。また、多発性硬化症の日本での罹患率は、10万人当たり10.8~14.4人と報告されています2)。日本での患者数は増加傾向にあります。

視神経脊髄炎(NMO)について
視神経脊髄炎は、アストロサイトという髄鞘とは別の細胞が攻撃されて破壊される疾患です。アストロサイトは中枢神経組織のなかにあって、その構造を支える支持組織としての働きやさまざまな物質の輸送に関与して周辺の脳組織の環境を調節する働きをします。NMOは、アストロサイトの足突起に発現している水チャネルアクアポリン-4が攻撃される病気と考えられています。アストロサイトが障害されると栄養、保護機構の障害が起こると考えられています。MSとNMOは治療法が異なるため注意が必要です3)。

バイオジェンについて
最先端の科学と医学を通じて、バイオジェンは重篤な神経学的疾患、神経変性疾患の革新的な治療法の発見および開発を行い、世界中の患者さんに提供しています。1978年に設立されたバイオジェンは、世界で歴史のあるバイオテクノロジー企業のパイオニアであり、多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、脊髄性筋萎縮症の唯一の治療薬を製品化しました(国内未承認)。また、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)といった神経領域の研究においても最先端の活動を展開しています。生物製剤の高い技術力を活かし、バイオジェンは高品質のバイオシミラーの製造と製品化にも注力しています。当社に関する情報については、https://www.biogen.com およびSNS媒体TwitterLinkedInFacebookYouTubeをご覧ください。

バイオジェン・ジャパンについて
バイオジェン・ジャパンは、米国バイオジェンの日本法人です。世界で最も歴史のある独立系バイオテクノロジー企業の日本法人として、日本では2000年より事業を展開しています。バイオジェン・ジャパンに関する情報については、https://www.biogen.co.jpをご覧ください。

CA-JPN-0068
参考文献
  1. 堀内泉, 吉良潤一.多発性硬化症.田村晃, 松谷雅生, 清水輝夫編.EBMに基づく脳神経疾患の基本治療指針.メジカルビュー社; 2002:276-79
  2. Kinoshita M, Obata K, Tanaka M. Latitude has more significant impact on prevalence of multiple sclerosis than ultraviolet level or sunshine duration in Japanese population. Neurol Sci. 2015;36(7):1147-51.
  3. 深澤俊行、多発性硬化症の自己管理.医薬ジャーナル社