本資料は、米バイオジェン社が 2017年4月21日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語訳として発表させていただくものです。よって必ずしも日本の状況を反映したものでないことをご了承ください。内容につきましては原本である英文が優先します。

 

バイオジェンのヌシネルセンが脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療薬として欧州CHMPの肯定的見解を受領

EUで初めて承認を推奨されるSMA治療薬

マサチューセッツ州ケンブリッジ – 2017年4月21日: – バイオジェン(NASDAQ略称:BIIB)は、欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会(CHMP)が、脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療薬としてSPINRAZA®(一般名:ヌシネルセンナトリウム、以下、ヌシネルセン)の販売承認を推奨する肯定的見解(positive opinion)を採択したことを本日発表しました。CHMPは、アンメット(満たされていない)医療ニーズを満たす医薬品の患者への早期アクセスを促進するための迅速審査プログラムの下でヌシネルセンを審査しました。ヌシネルセンは、欧州連合(EU)においてCHMPによって初めて承認を推奨されるSMA治療薬となります。

バイオジェンの研究開発部門エグゼクティブ・バイスプレジデントであるマイケル・エーラーズ, M.D., Ph.D.は次のように述べています。「迅速審査プログラムの下で迅速になされたCHMPの承認に向けた肯定的見解は、ヌシネルセンの強力な有効性プロファイルを認識し、欧州における効果的なSMA治療に対する強いアンメットニーズの存在について強調しました。私たちは欧州委員会の決定を待ち望んでおり、ヌシネルセンが欧州連合内のSMA患者さんに有意義な影響を及ぼす可能性があると確信しています」。

CHMP肯定的見解は、現在、欧州連合内で統合的に認可される医薬品の販売許可を付与する機関である欧州委員会(EC)に付託されています。CHMPは、この疾病の病態で最も頻度が多く、SMA症例1の約95%に相当する5q SMAの治療薬としての表示を推奨しています。米国に続き、乳児期発症及び遅発性を包括した承認を得るSMA治療薬として、今後数カ月内にECの決定がなされるものと期待されています。 

肯定的見解を支持するデータ
この見解は、ヌシネルセンの臨床的に有意な有効性および良好な安全性プロファイルが両方の型で示されたENDEAR試験(乳児期発症型SMA)とCHERISH試験(遅発型SMA)の2つの極めて重要な比較試験に関するCHMPの評価に主に基づいています。

  • ENDEAR試験では、ヌシネルセンで治療した乳児期発症型SMA(1型を発症する可能性が最も高い)の患者群は、ヌシネルセンで治療していない患者群と比較して、統計学的により高い割合で運動マイルストーンの改善を示しました。ヌシネルセン治療群では数人において、蹴る、頭が座る、寝返りを打つ、座位の保持および腹ばいができるという運動マイルストーンの達成が認められました。試験分析の終了時に、ヌシネルセンで治療した患者群は、ヌシネルセンで治療していない患者群と比較して、死亡または永続的な呼吸器装着のリスクの統計学的に有意な減少が見られました。
  • CHERISH試験では、ヌシネルセンで治療した遅発型SMA(2型または3型が発症する可能性が最も高い)の患者群は、ヌシネルセンで治療していない患者群と比較して、中間解析で、運動機能の統計的に有意かつ臨床的に有意な改善を示しました。改善は、Hammersmith Functional Motor Scale Expanded(HFMSE)で測定されました。HFMSEはSMAの小児の運動発達機能を評価するために特別に設計された信頼性の高いバリデートされた評価ツールです。
  • 1、2または3型を発症する可能性が最も高い発症前および症状を示している患者群の非盲検試験のデータは、上記の非常に重要な試験の結果と一致し、推奨された適応症を支持すると考えられました。これらの試験による総合的な知見は、SMA患者群におけるヌシネルセンの有効性および安全性を裏付けるものとなっています。
  • ヌシネルセンは良好な安全性プロファイルを示しました。ヌシネルセンは腰椎穿刺による髄腔内投与によるリスク(例えば頭痛、腰痛、嘔吐)があるため、腰椎穿刺の治療経験を有する医療専門家によって投与されることになります。

ヌシネルセンの臨床試験プログラム状況
バイオジェンはヌシネルセンの世界的な開発・製造・販売権を、アンチセンス治療のリーダーであるIonis Pharmaceuticals(発音:アイオニス・ファーマシューティカルズ)社(NASDAQ略号: IONS)からライセンス導入しました。バイオジェンとIonis社は革新的な臨床プログラムを実施し、2011年に臨床試験でヌシネルセンを初めてヒトへ投与し、2016年には規制当局による初の承認を獲得しました2

ヌシネルセンは2016年12月23日に、申請後3カ月で米国FDAより最初に承認されました。さらに、バイオジェンは、日本、カナダ、オーストラリアとスイスなどで2017年中に申請を行いました。

SMA 3-7について
SMAは、脊髄および下位脳幹における進行性の運動ニューロンの脱落を特徴とする疾患であり、重篤で進行性の筋萎縮や筋無力を引き起こします。最も重篤なタイプのSMAの患者さんは最終的に麻痺状態となり、呼吸や嚥下など生命維持のための基本的な身体機能に支障をきたす恐れがあります。

SMN1(Survival of Motor Neuron 1)遺伝子の欠落または欠損により、SMAの患者さんは運動ニューロン維持に必要なSMNタンパク質を十分に産生することができません。SMAの重篤度はSMNタンパク質の量と相関関係があります。1型SMAの患者さんは最もきめ細やかな支持療法を必要としますが、SMNタンパク質がほとんど生成されないため、支えなしに座ることができず、呼吸器による補助なしに2年以上生存することができません。2型と3型の患者さんでは、より多くのSMNタンパク質が生成され重篤度も下がりますが、日々の生活と人生に困難を強いられます。

ヌシネルセンについて
ヌシネルセンはSMAの治療薬としてグローバルレベルで開発が進められています。

ヌシネルセンはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であり、5番染色体長腕(5q)内のSMN1遺伝子変異による SMNタンパク質欠損により引き起こされるSMAの治療薬として設計されました。本剤は変異したSMN1の重複遺伝子であるSMN2のスプライシングを変えるようデザインされています。その目的は完全に機能するSMNタンパク質の産生を増やすことにあります8。ASOは標的RNAと結合して遺伝子発現を調節するようデザインされた短鎖の合成ヌクレオチドです。このテクノロジーを使うことで、ヌシネルセンは機能的SMNタンパク質の量を増やす可能性を備えています。

ヌシネルセンは髄腔内注射によって投与されます。これにより、SMNタンパク質のレベルが不足することにより運動ニューロンの変性が起きている患者の脊髄の周囲の脳脊髄液(CSF)9に直接治療薬を届けています10

ヌシネルセンの髄腔内投与に伴う有害事象のリスク(頭痛、腰痛、嘔吐など)が報告されています。いくつかのASOでは、投与後に急性の重症血小板減少症を含む血液凝固異常と血小板減少症が報告されています。また、いくつかのASOでは、投与後に腎毒性が観察されています。

バイオジェンについて
最先端の科学と医学を通じて、バイオジェンは重篤な神経学的疾患、神経変性疾患の革新的な治療法の発見および開発を行い、世界中の患者さんに提供しています。1978年に設立されたバイオジェンは、世界で歴史のあるバイオテクノロジー企業のパイオニアであり、多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、脊髄性筋萎縮症の唯一の治療薬を製品化しました(国内未承認)。また、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)といった神経領域の研究においても最先端の活動を展開しています。生物製剤の高い技術力を活かし、バイオジェンは高品質のバイオシミラーの製造と製品化にも注力しています。当社に関する情報については、https://www.biogen.com およびSNS媒体TwitterLinkedInFacebookYouTubeをご覧ください。

参考文献
  1. Farrar MA, Kiernan MC. The Genetics of Spinal Muscular Atrophy: Progress and Challenges. Neurotherapeutics; 2015; 12:290–302.
  2. Biogen. SPINRAZA USPI. December 2016.
  3. Darras B, Markowitz J, Monani U, De Vivo D. Chapter 8 - Spinal Muscular Atrophies. In: Vivo BTD, ed. Neuromuscular Disorders of Infancy, Childhood, and Adolescence (Second Edition). San Diego: Academic Press; 2015:117-145.
  4. Lefebvre S, Burglen L, Reboullet S, et al. Identification and characterization of a spinal muscular atrophy-determining gene. Cell. 1995;80(1):155-165. 
  5. Mailman MD, Heinz JW, Papp AC, et al. Molecular analysis of spinal muscular atrophy and modification of the phenotype by SMN2. Genet Med. 2002;4(1):20-26. 
  6. Monani UR, Lorson CL, Parsons DW, et al. A single nucleotide difference that alters splicing patterns distinguishes the SMA gene SMN1 from the copy gene SMN2. Hum Mol Genet. 1999;8(7):1177-1183. 
  7. Peeters K, Chamova T, Jordanova A. Clinical and genetic diversity of SMN1-negative proximal spinal muscular atrophies. Brain. 2014;137(Pt 11):2879-2896. 
  8. Hua Y, Sahashi K, Hung G, Rigo F, Passini MA, Bennett CF, Krainer AR. Antisense correction of SMN2 splicing in the CNS rescues necrosis in a type III SMA mouse model. Genes Dev. 2010 Aug 1; 24(15):16344-44. 
  9. Evers MM, Toonen LJ, van Roon-Mom WM. Antisense oligonucleotides in therapy for neurodegenerative disorders. Adv Drug Deliv Rev. 2015;87:90-103. 
  10. Lunn MR, Wang CH. Spinal muscular atrophy. Lancet. 2008;371(9630):2120-2133. 
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