- 2つのパートからなる臨床第II相LILAC試験パートAの結果によると、litifilimabはプラセボと比較して全身性エリテマトーデス(SLE)患者における活動性関節総数に基づく疾患活動性を有意に減少
- バイオジェンは現在、全世界31カ国で2つの臨床第III相試験に疾患活動性SLEの被験者登録を進めており、今年後半には皮膚エリテマトーデス(CLE)のピボタル試験を開始する予定
- CLEを対象としたLILAC試験パートBのポジティブな結果は別途「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に掲載されており、ループスを対象とするlitifilimabの開発継続を支持するエビデンスが蓄積
米マサチューセッツ州ケンブリッジ、2022年9月7日(米国時間)– バイオジェン(NASDAQ略称BIIB)は、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)が、2つのパートからなる臨床第II相LILAC試験のポジティブな結果を紹介する2本目の論文を掲載したことを発表しました。同社が実施中の本試験は、全身性エリテマトーデス(SLE)および皮膚エリテマトーデス(CLE)の治療薬候補litifilimab (開発コードBIIB059) を評価したものです。本日掲載されたSLEパート(パートA)の結果によると、litifilimabはプラセボと比較して疾患活動性のある関節総数の有意な減少を示し、本試験の主要評価項目を達成しました。本試験のCLEパートのポジティブなデータは2022年7月28日発行のNEJMに掲載されました。
ノースウェル・ヘルス(Northwell Health)リウマチ学マリリン・アンド・バリー・ルーベンスタイン・チェア(The Marilyn and Barry Rubenstein Chair in Rheumatology)およびリウマチ科主任(Chief of the Division of Rheumatology)で、ファインスタイン医学研究所(the Feinstein Institutes for Medical Research)教授でもあるRichard Furie, M.D.は次のように述べています。「ループスは慢性の炎症、疼痛、臓器障害を起こす重篤な自己免疫疾患で、罹患者の大半は女性および有色人種です。Litifilimabにより、形質細胞様樹状細胞によって産生されるI型インターフェロンや他の炎症メディエータの産生を阻害することが示されました。これらのメディエータがループスの疾患活動性に関わっていることを示す堅牢なエビデンスが蓄積されました」。
バイオジェンは現在、全世界269の臨床試験実施施設で疾患活動性SLEに対するlitifilimab の有効性と安全性を評価する臨床第III相TOPAZ-1、TOPAZ-2試験への被験者登録を進めています。臨床試験における多様性を確保するためのバイオジェンの取り組みの一環として、TOPAZ試験ではアフリカ系アメリカ人およびヒスパニック系/ラテン系コミュニティが適切に反映されるように被験者登録の目標が設定されています。バイオジェンはまた2022年にCLEに対するlitifilimabのピボタル試験を開始する予定です。
バイオジェンで多発性硬化症&自己免疫領域開発ユニットのトップを務めるNathalie Franchimont, M.D., Ph.D.は次のように述べています。「今回2本目の論文がNEJMに掲載されたことは、SLEおよびCLEのファーストインクラスの治療薬としてのlitifilimabの可能性に対する私たちの確信をより強固にし、臨床第II相LILAC試験プログラムのデータの一体性を示しています。バイオジェンの目標はループスの疾患活動性を低下させるのみならず、患者さんに最も大きな影響を与える臨床症状も減少させる新たな治療選択肢を発見し開発することです。臨床第III相試験でlitifilimab の評価を継続し、新たな知見が得られればデータを共有したいと考えています」。
臨床第II相LILAC試験パートAの結果
LILAC試験はプラセボ対照無作為化二重盲検試験で、litifilimabの有効性と安全性を2つのパートでプラセボと比較しました: パートAは、関節および皮膚に疾患活動性が現れているSLEの被験者が対象; パートBは、中等症から重症の活動性CLEの被験者(全身症状発現の有無にかかわらず、疾患活動性が亜急性および慢性のサブタイプを含む)が対象。既に報告されているように、本試験のパートA、パートBともに、litifilimabがSLEおよびCLEの被験者において、それぞれ、疾患活動性のある関節総数と皮膚疾患活動性の減少でプラセボに対して優越な有効性を示し、それぞれの主要評価項目を達成しました。
LILAC試験パートAにおいて、litifilimabはSLEの被験者の関節腫脹と圧痛関節の総数をプラセボと比較して24週にわたり有意に減少させました。本臨床第II相試験は副次評価項目を検討する設計ではありませんでした。
LILAC試験パートAにおいて、litifilimabは総じて良好な忍容性を示し、報告された殆どの有害事象は軽症または中等症と評価されました。併合されたlitifilimab投与群の5%以上で報告された主な有害事象は、下痢、鼻咽頭炎、尿路感染症、転倒および頭痛でした。
Litifilimab (BIIB059)について
バイオジェンが創製し単独で開発するlitifilimab(開発コードBIIB059)は、血液樹状細胞抗原2(BDCA2)を標的とする完全ヒト化IgG1モノクローナル抗体で、SLEおよびCLEの治療薬候補として開発されています。BDCA2は形質細胞様樹状細胞(pDCs)と呼ばれるヒト免疫細胞のサブセットに特異的に発現する受容体で、litifilimabはpDCsからタイプ-I IFN(IFN-I)および他のサイトカインやケモカイン等の炎症産物の産生を減少させることが示されています1,2。これらの炎症性メディエータはSLEおよびCLEの発症機序に重要な役割を果たすと考えられています。
全身性エリテマトーデス(SLE)について
全身型ループスであるSLEは慢性の自己免疫疾患で、複数の臓器系に症状が発現し、疾患活動期(フレア期)と疾患不活動期が交互に繰り返されます。3 SLEは皮疹、関節炎、貧血、血小板減少症、漿膜炎、腎炎、痙攣発作、精神疾患等の様々な形で症状が現れることがあります。4 SLEは感染症や循環器疾患等を原因とする死亡リスクの上昇につながります。
ループスの罹患者数は全世界で500万人と推計されています。5 患者さんの推計90%は女性で、15~40歳の間に発症することが最も多いです。6 この疾患は、アフリカ系アメリカ人、アジア人、アメリカ先住民/アラスカ先住民、ヒスパニック系/ラテン系コミュニティを含む様々な民族-人種グループに多く見られています。6-10 現在、ループスの治療法は存在しません。
神経科学と免疫学が交わる領域に関するバイオジェンの数十年にわたる研究は、免疫学における専門性の高い豊富な知見を当社にもたらしました。バイオジェンは2つのループスの治療薬候補を臨床第III相試験に進めています。Dapirolizumab pegolはSLEを対象にUCB社と共同開発を行っています。もう一つのlitifilimab (BIIB059)はバイオジェンが創製し単独で開発を行っており、現在SLEを対象に臨床第III相試験中で、CLEに対する試験の推進も計画しています。
バイオジェンについて
神経科学領域のパイオニアであるバイオジェンは、最先端の医学と科学を通じて、重篤な神経学的疾患、神経変性疾患の革新的な治療法の発見および開発を行い、その成果を世界中の患者さんに提供しています。1978年にチャールズ・ワイスマン、ハインツ・シェイラー、ケネス・マレー、ノーベル賞受賞者であるウォルター・ギルバートとフィリップ・シャープにより設立されたバイオジェンは、世界で歴史のあるバイオテクノロジー企業のひとつです。バイオジェンは多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、脊髄性筋萎縮症の最初の治療薬を製品化し、アルツハイマー病の病理に作用する最初で唯一の治療薬を提供しています。また、生物製剤の高い技術力を活かしてバイオシミラーの製品化を行い、業界内で最も多様な神経科学領域のパイプラインに注力し、進展させており、アンメットニーズが高い疾患領域の患者さんの治療水準に変化をもたらしています。
2020年、バイオジェンは、気候、健康、公平さが深く相互に関連する課題に対して、20年間に2億5000万ドルを投資する大規模な取組みを開始しました。Healthy Climate, Healthy Lives ™は、ビジネス全体で化石燃料の使用をゼロにし、著名な研究機関とのコラボレーションを構築して科学研究を進展させ、人類の健康を改善し、発展途上のコミュニティをサポートすることを目的としています。
バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体Twitter, LinkedIn, Facebook, YouTubeをご覧ください。
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