バイオジェンの「スピンラザ®髄注12mg」臨床所見は発現していないが遺伝子検査により発症が予測される脊髄性筋萎縮症(SMA)への効能追加承認取得

バイオジェン・ジャパン株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:ニコラス R. ジョーンズ)は、「スピンラザ®髄注12mg」(一般名:ヌシネルセンナトリウム)について、「臨床所見は発現していないが遺伝子検査により発症が予測される脊髄性筋萎縮症(SMA)」への効能追加承認を、本日取得しましたことをお知らせします。

SMAは、SMN1(Survival of Motor Neuron 1)遺伝子の欠損または機能喪失を誘発する変異等によってSMNタンパクの欠乏およびそれに付随する脊髄前角における運動ニューロンの変性が生じ、四肢および体幹の随意筋の萎縮を生じる常染色体劣性遺伝疾患です。日本における現在のSMAの診断基準では、臨床症状の発現により確定診断がなされるため、遺伝子検査によりSMN1遺伝子の欠失または変異を有している場合であっても、本剤で治療を開始するためには臨床症状の発現を待つ必要がありました。

海外第II相試験(NURTURE試験)
(臨床所見は発現していないが遺伝子検査により発症が予測されるSMA患者を対象にした試験)

遺伝子検査によりSMN1遺伝子の欠失または変異を有し、臨床所見は発現していない3~42日齢の外国人脊髄性筋萎縮症患者さん25例を対象に、用法・用量に従い、12mg相当量の本剤を初回投与後、15、29、および64日目に投与し、以後4カ月後に1回維持投与する非盲検非対照試験を実施しました。中間解析において被験者の治験薬の最終投与または有効性評価の最終来院時点までの試験参加期間は中央値45.11カ月(範囲:33.3~56.8カ月)であり、主要評価項目であるイベント(死亡または呼吸介入)が発現するまでの期間について、25例全例が生存し、4例は呼吸介入が必要になったものの、気管切開術または永続的換気を必要とした被験者は認められませんでした。
本剤が投与された25例のうち11例(44.0%)に副作用が認められました。主な副作用は筋力低下(12.0%)でした。

スピンラザについて
スピンラザはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であり、5番染色体長腕(5q)内のSMN1遺伝子の欠失又は変異による SMNタンパク質欠乏により引き起こされるSMAの治療薬として設計されました。本剤は変異したSMN1の重複遺伝子であるSMN2のスプライシングを変えるようデザインされています。その目的は完全に機能するSMNタンパク質の産生を増やすことにあります。ASOは標的RNAと結合して遺伝子発現を調節するようデザインされた短鎖の合成ヌクレオチドです。このテクノロジーを使うことで、ヌシネルセンは機能的SMNタンパク質の量を増やす可能性を備えています。

スピンラザは2016年12月23日、米国の食品医薬品局(FDA)によって初めて承認されたアンチセンス核酸医薬品です。SMAは乳幼児の死亡の主要な遺伝的原因のひとつであり、進行性で筋力の低下を特徴としています。日本では、オーファンドラッグ指定のもと、乳児型SMAの適応症は2017年7月3日に、乳児型以外のSMAの適応症は2017年9月22日に承認されました。

製品に関する概要

製品名 スピンラザ®髄注12mg
一般名(JAN) ヌシネルセンナトリウム
効能・効果 脊髄性筋萎縮症、臨床所見は発現していないが遺伝子検査により発症が予測される脊髄性筋萎縮症
用法・用量 乳児型脊髄性筋萎縮症、臨床所見は発現していないが遺伝子検査により発症が予測される脊髄性筋萎縮症
通常、ヌシネルセンとして、1回につき下表の用量を投与する。初回投与後、2週、4週及び9週に投与し、以降4ヵ月の間隔で投与を行うこととし、いずれの場合も1~3分かけて髄腔内投与すること。
乳児型以外の脊髄性筋萎縮症
通常、ヌシネルセンとして、1回につき下表の用量を投与する。初回投与後、4週および12週に投与し、以降6ヵ月の間隔で投与を行うこととし、いずれの場合も1~3分かけて髄腔内投与すること。

各投与時の日齢 用量 投与液量
0~90日齢 9.6 mg 4 mL
91~180日齢 10.3mg 4.3 mL
181~365日齢 10.8mg 4.5 mL
366~730日齢 11.3mg 4.7 mL
731日齢~ 12mg 5 mL

副作用 報告されている主な副作用は以下のとおりです。
頭痛、頻尿、嘔吐、背部痛、発熱、脊椎穿刺後症候群(頭痛、吐き気、嘔吐)[1%以上]、蜂巣炎、食欲亢進、不眠症、眼振、血管炎、カタル、発声障害、便失禁、悪心、寝汗、皮膚疼痛、筋力低下、貧血母斑、体温低下、体温上昇、処置後腫張[1%未満]。また頻度は不明ながら重大な副作用として水頭症。
製造販売承認日 2017年7月3日
一部変更承認日 2022年3月28日
薬価 9,493,024円(乳児型の場合、4カ月毎、年3回投与における年間薬剤費は28,479,072円。乳児型以外の場合、年2回投与における年間薬剤費は18,986,048円。)(2017年8月30日薬価収載)
製造販売元 バイオジェン・ジャパン株式会社

 

SMA 1-3について
SMAは、脊髄および下位脳幹における進行性の運動ニューロンの脱落を特徴とする疾患であり、重症で進行性の筋萎縮や筋無力を引き起こします。最も重篤なタイプのSMAの患者さんは最終的に麻痺状態となり、呼吸や嚥下など生命維持のための基本的な身体機能に支障をきたす恐れがあります。
SMN1遺伝子の欠失又は変異により、SMAの患者さんは運動ニューロン維持に必要なSMNタンパク質を十分に産生することができません。SMAの重症度はSMNタンパク質の量と相関関係があります。I型SMAの患者さんは最もきめ細やかな支持療法を必要としますが、SMNタンパク質がほとんど生成されないため、支えなしに座ることができず、呼吸器による補助なしに2年以上生存することができません。II型とIII型の患者さんでは、より多くのSMNタンパク質が生成され重症度も下がりますが、日々の生活と人生に困難を強いられます。

バイオジェンについて
神経科学領域のパイオニアであるバイオジェンは、最先端の医学と科学を通じて、重篤な神経学的疾患、神経変性疾患の革新的な治療法の発見および開発を行い、その成果を世界中の患者さんに提供しています。1978年にチャールズ・ワイスマン、ハインツ・シェイラー、ケネス・マレー、ノーベル賞受賞者であるウォルター・ギルバートとフィリップ・ シャープにより設立されたバイオジェンは、世界で歴史のあるバイオテクノロジー企業のひとつです。バイオジェンは多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、脊髄性筋萎縮症の最初の治療薬を製品化し、生物製剤の高い技術力を活かしてバイオシミラーの製品化を行っています。さらに、多発性硬化症および神経免疫疾患、アルツハイマー病および認知症、神経筋障害、運動障害、眼疾患、免疫疾患、神経認知障害、急性神経疾患および疼痛といった神経領域の研究においても最先端の活動を展開しています。
バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体TwitterLinkedInFacebookYouTubeをご覧ください。

参考文献
  1. Based on Commercial Patients, Early Access Patients, and Clinical Trial Participants as of March 31, 2020.
  2. Finkel R, Chiriboga C, Vajsar J, et al. Treatment of infantile-onset spinal muscular atrophy with nusinersen: a phase 2, open-label, dose-escalation study. Lancet. 2016;388(10063):3017-3026.
  3. Darras B, Markowitz J, Monani U, De Vivo D. Chapter 8 - Spinal Muscular Atrophies. In: Vivo BTD, ed. Neuromuscular Disorders of Infancy, Childhood, and Adolescence (Second Edition). San Diego: Academic Press; 2015:117-145.
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