米マサチューセッツ州ケンブリッジ、2021年6月16日 – バイオジェン(NASDAQ略称 BIIB)は、 アルツハイマー病の治療薬候補として開発中の抗タウ抗体ゴスラネマブ(BIIB092)について、臨床第II相TANGO試験のトップライン結果を発表しました。
ゴスラネマブは、アルツハイマー病(AD)による軽度認知障害(MCI)および軽度AD患者さんを対象にしたプラセボ対照試験で、78週でのCDR-SB(臨床的認知症評価尺度:Clinical Dementia Rating Scale-Sum of Boxes)のベースラインからの変化という主要有効性評価項目を達成しませんでした。探索的有効性評価項目である、ADAS-Cog 13(Alzheimer’s Disease Assessment Scale–Cognitive Subscale)、ADCS-ADL(Alzheimer Disease Cooperative Study Activity of Daily Living)、MMSE(Mini-Mental State Examination)、FAQ(Functional Assessment Questionnaire)においても治療によるベネフィットは認められませんでした。ゴスラネマブの忍容性は全体として良好で、安全性に関する結果は同剤のこれまでの試験結果と一貫していました。
ゴスラネマブはタウのN末端を標的とする抗体です。これまでの試験と同じく、脳脊髄液(CSF)におけるN末端タウが減少し、ターゲットエンゲージメントが示されました。しかし、TANGO試験において、78週でのタウPET検査で、どの投与群においても統計学的有意な治療効果は認められませんでした。
バイオジェンの研究開発部門のトップであるアルフレッド・サンドロック, Jr., M.D., Ph.D.は次のように述べています。「ゴスラネマブの第II相試験の結果は残念ですが、私たちはイノベーションへの道のりが決して平坦ではないことを承知しており、一つひとつの試験からは常に学ぶべきことがあると考えています。私たちはADに対するタウの他のアプローチを含め、神経科学領域の広範なパイプラインに投資しています。TANGO試験に貢献してくださった参加者や治験実施施設のスタッフの皆様をはじめ、ADに関わる関係者の方々に心からの感謝を捧げたいと思います」。
今回のTANGO試験の結果に基づいて、バイオジェンはゴスラネマブの臨床開発を中止します。CSFバイオマーカーを含む追加データの分析は継続中で、バイオジェンは今後開催される学会でTANGO試験のこれらの結果を発表する予定です。
第II 相TANGO試験について
ゴスラネマブの臨床第II相TANGO試験 (NCT03352557) は、78週間のプラセボ対照二重盲検並行群間比較試験で、ADによる軽度認知障害(MCI)または軽度AD患者を対象に、安全性および臨床症状の進行抑制の割合を評価するもので、78週後は用量盲検の長期延長期間を設けるというものでした。本試験は97施設の654名の被験者を登録しました。6ヵ月以上にわたり記憶機能の変化が徐々に進行した50歳から80歳で、CDR-SBのスコアがADによるMCIで0.5、または軽度ADで0.5または1、MMSEのスコアが22以上30以下、CDR Memory Boxスコアが0.5以上で、CSFまたはアミロイドPETの検査でアミロイドが検出され、ADによるMCIまたは軽度ADの臨床基準を全て満たした被験者が、低用量、中用量、または高用量のゴスラネマブ、またはプラセボ群に割りつけられ、4週間に1度の静注投与を受けました。本試験の主要評価項目は安全性でした。
バイオジェンについて
神経科学領域のパイオニアであるバイオジェンは、最先端の医学と科学を通じて、重篤な神経学的疾患、神経変性疾患の革新的な治療法の発見および開発を行い、その成果を世界中の患者さんに提供しています。1978年にチャールズ・ワイスマン、ハインツ・シェイラー、ケネス・マレー、ノーベル賞受賞者であるウォルター・ギルバートとフィリップ・シャープにより設立されたバイオジェンは、世界で歴史のあるバイオテクノロジー企業であり、多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、脊髄性筋萎縮症の最初の治療薬を製品化いたしました。また、多発性硬化症および神経免疫疾患、アルツハイマー病および認知症、神経筋障害、運動障害、眼疾患、神経精神疾患、免疫疾患、急性神経疾患および疼痛といった神経領域の研究においても最先端の活動を展開しています。
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