本資料は、米バイオジェン社が 2020年6月10日(現地時間)に発表したプレスリリースの日本語訳として発表させていただくものです。内容につきましては原本である英文が優先します。

 

脊髄性筋萎縮症(SMA)発症前の被験者を対象とするNURTURE試験の新たな結果はスピンラザ®(ヌシネルセン)による治療効果の持続を示唆

  • スピンラザによる治療を最長で4.8年継続した結果、SMA発症前*に治療を開始した小児の100%が生存し、永続的な人工呼吸器の使用を必要とした被験者は皆無。
  • 被験者は、SMAにおいて予想される自然経過と比較して、運動機能の維持、かつ着実な獲得を示し、今では96%が補助があれば歩行可能に。
  • NURTURE試験は、最近、スピンラザのより長期にわたる有効性と安全性を評価するために8歳まで治療を継続するよう延長。

*日本では未承認

米マサチューセッツ州ケンブリッジ、2020年6月10日 – バイオジェン(NASDAQ略称BIIB)は、脊髄性筋萎縮症(SMA)の発症前*の被験者を対象とする最長の試験であるNURTURE試験の新しい結果を発表し、スピンラザ(ヌシネルセン)による早期治療に対する期待を一新しました。遺伝学的にSMAと診断された乳幼児において、新規データはスピンラザによる早期からの最長4.8年間の持続的治療が過去に類を見ない生存を可能にしたことを示しました。被験者はSMAにおいて予想される自然経過と比較して、運動機能を維持し着実な改善を示し続けました。これらの結果は、2020年6月10~12日にオンラインで開催されたCure SMA 研究および臨床治療会議(Cure SMA Research & Clinical Care Meeting)で発表されました。

新規データにはNURTURE試験の被験者の1年近くにわたる追加フォローアップデータが含まれます。2020年2月時点において、治療を受けたすべての被験者(n=25; 年齢の中央値3.8歳)が生存しており、永続的な人工呼吸器の使用を必要としませんでした。治療を受けなかった場合、I型SMAの小児の大部分は、平均で2歳の誕生日を迎えることができなかったと考えられます。さらに、自力歩行が可能になるという運動機能のマイルストーンを達成(多くは標準の発育タイムフレーム内)したすべての小児が、最初の達成日から最後の観察日までその能力を維持しました。

マサチューセッツ・ジェネラル・ホスピタルの神経遺伝学プログラムのディレクターで、キャサリン B. シムズ医師の寄付講座教授を務めるキャスリン・スウォボダ医師は次のように述べています。「これらの乳幼児や家族に対するスピンラザの早期からの持続的治療のインパクトは素晴らしいものです。私は彼らが活発な子どもに成長し、多くが同じ年齢のSMAでない他の子どもと同じような運動機能の発達を経験するのを目の当たりにすることができたことを、名誉に思います。NURTURE試験の新しい結果は、迅速な診断とスピンラザによる早期からのより長期の治療がもたらす大きなベネフィットを引き続き支持するものです」。

NURTURE試験は、遺伝学的にSMAと診断され(I型・II型SMAを発症する可能性が極めて高い)、生後6週間前にスピンラザの最初の投与を受けた25人の発症前の被験者を対象にした継続中の第II相非盲検試験です。本試験はさらに3年延長されており、バイオジェンは8歳になるまでのより長期にわたるスピンラザの有効性と安全性を評価し、早期の治療がもたらす効果への理解につなげます。NURTURE試験(NCT02386553)のより詳しい情報はclinicaltrials.govに掲載されています。

2020年2月時点でのアップデートされた中間解析からの追加の結果は以下のとおりです:

  • 以前から補助があれば歩行ができた被験者(92%)および自力で歩行ができた被験者(88%)は、全員が最終のデータカット日以降11か月にわたりその能力を維持しました1
  • 11か月のフォローアップ期間中、1人の小児は補助があれば歩行できるようになり(全被験者に対する割合が96%に上昇)、同時にフィラデルフィア子ども病院神経筋疾患乳幼児テスト(CHOP-INTEND)スケールの最高値に達し、最高値を達成した被験者の総数を25人中21人(85%)に増加させました。
  • SMN2遺伝子を2コピー持つ被験者が、拡大版ハマースミス運動機能評価スケール(HFMSE)の評価で得点を記録し改善を示すことができました。これはSMAの自然経過とは異なる結果です。
  • スピンラザは高い忍容性を示し、延長フォローアップ期間中に新たな安全性の懸念は特定されませんでした。治療に関連する有害事象で試験を中断した被験者はいませんでした。

スピンラザ® (ヌシネルセン)2-4 について
スピンラザは脊髄性筋萎縮症(SMA)の乳幼児、小児および成人の治療の適応症で承認された初めての治療薬で、世界50カ国以上で承認されています。2020年3月31日現在、10000人以上がスピンラザによる治療を受けています。スピンラザは、広範な患者集団にわたって最大規模のリアルワールドでの経験と強固な臨床エビデンスを兼ね備えた最初のSMA治療薬です。

SMAは遺伝子変異による希少な神経筋疾患です。その特徴は、脊髄および下位脳幹における運動ニューロンの喪失であり、重症化し進行すると筋萎縮と衰弱に至ります。約1万人に1人が出生時にSMAと診断されますが、この疾患の影響はすべての年齢層におよびます。SMAは遺伝的要因による乳幼児の死亡原因で最も多いものの一つです。

スピンラザはSMAの基盤となる治療であり、IONIS(アイオニス)・ファーマシューティカルズ社の特許技術を用いて、運動ニューロンの維持に不可欠な全長Survival Motor Neuron (SMN) タンパクの量を増やすことでSMAの根本原因を標的にするよう設計された、アンチセンス・オリゴヌクレオチド (ASO) の一種です。スピンラザは髄腔内注射によって運動ニューロンが存在する脊髄を取り囲む体液に投与されます。それにより、スピンラザが疾患の発症部位に到達します。

スピンラザは現在、SMAにおける豊富な臨床データセットを保持しています。そこでは、300人以上の被験者からなる幅広いSMA母集団において好ましいリスク・ベネフィットプロファイルが示されています。スピンラザはまた、乳児型と遅発型SMAの被験者において、2つの無作為化・二重盲検・シャム対照試験(それぞれ、ENDEAR試験とCHERISH試験)で評価されました。また、発症前の乳幼児(NURTURE試験)、および遅発型SMA被験者(CS2/CS12)におけるオープンラベル試験、そして以前の臨床開発プログラムに参加した被験者における延長試験(SHINE試験)によっても支持されています。最も多く観察された有害事象は、呼吸器感染症、発熱、便秘、頭痛、嘔吐、腰痛でした。過敏症、髄膜炎、水頭症が市販後に観察されています。腎毒性や、急性で重篤な血小板数減少などを含む血液凝固障害が、いくつかのASO薬投与後に観察されています。臨床検査により、こうした兆候をモニターすることができます。

バイオジェンは、スピンラザを開発・製造・商業化するためのグローバルな権利を、アンチセンス医療のリーダーの一つであるアイオニス・ファーマシューティカルズ社(ナスダック略号:IONS)から供与されています。バイオジェンとアイオニスはスピンラザを初めてヒトに投与した革新的な臨床開発プログラムを2011年から実施し、5年で最初の薬事承認を取得しました。

バイオジェンについて
神経科学領域のパイオニアであるバイオジェンは、最先端の医学と科学を通じて、重篤な神経学的疾患、神経変性疾患の革新的な治療法の発見および開発を行い、その成果を世界中の患者さんに提供しています。1978年にチャールズ・ワイスマン、ハインツ・シェイラー、ケネス・マレー、ノーベル賞受賞者であるウォルター・ギルバートとフィリップ・シャープにより設立されたバイオジェンは、世界で歴史のあるバイオテクノロジー企業であり、多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、脊髄性筋萎縮症の最初の治療薬を製品化いたしました。また、多発性硬化症および神経免疫疾患、アルツハイマー病および認知症、神経筋障害、運動障害、眼疾患、免疫疾患、神経認知障害、急性神経疾患および疼痛といった神経領域の研究においても最先端の活動を展開しています。バイオジェンは生物製剤の高い技術力を活かし、高品質のバイオシミラーの製品化にも注力しています。

バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体TwitterLinkedInFacebookYouTubeをご覧ください。

参考文献
 
  1. Matsumoto H, Clayton-Krasinski DA, Klinge SA, et al. Development and initial validation of the assessment of caregiver experience with neuromuscular disease. J Pediatr Orthop. 2011;31(3):284-292.
  2. Based on Commercial Patients, Early Access Patients, and Clinical Trial Participants as of March 31, 2020.
  3. Finkel R, Chiriboga C, Vajsar J, et al. Treatment of infantile-onset spinal muscular atrophy with nusinersen: a phase 2, open-label, dose-escalation study. Lancet. 2016;388(10063):3017-3026.
  4. Darras B, Markowitz J, Monani U, De Vivo D. Chapter 8 - Spinal Muscular Atrophies. In: Vivo BTD, ed. Neuromuscular Disorders of Infancy, Childhood, and Adolescence (Second Edition). San Diego: Academic Press; 2015:117-145.
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