2018年10月 29日– バイオジェン (Nasdaq略号: BIIB) とエーザイ株式会社(本社:東京、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下「エーザイ」)は、アルツハイマー病(AD)による軽度認知障害(MCI)および軽度アルツハイマー型認知症治療薬候補であるアデュカヌマブについて、現在進行中の第Ib相試験の長期継続投与(LTE: long-term extension)試験の36カ月と48カ月の詳細解析結果をスペインのバルセロナで開催中の「アルツハイマー病臨床試験会議」(CTAD: Clinical Trials on Alzheimer’s Disease)で発表しました。
Late Breakingとして採択された口頭発表およびポスター発表には、アデュカヌマブの投与を最長36カ月、または最長48カ月受けた患者さんのデータが含まれています。両解析から得られたポジトロン放出断層撮影法(PET)により測定されたアミロイド蓄積のデータは、いずれも用量依存的ならびに経時的な減少を示しました。さらに、探索的臨床評価項目である臨床的認知症重症度判定尺度(CDR-SB)およびミニメンタルステート検査(MMSE)による解析では、持続的な臨床症状進行の遅延が36カ月および48カ月にわたって示唆されました。それぞれの投与群の結果は、全般的に以前に報告した本試験の解析との一貫性が確認されました。また、アデュカヌマブのリスク・ベネフィットのプロファイルに変化はありませんでした。
バイオジェンのエグゼクティブ・バイス・プレジデント兼チーフ・メディカル・オフィサーのアルフレッド・サンドロックM.D., Ph.Dは次のように述べています。「本第Ib相試験は、アデュカヌマブについて今や4年間にわたる試験結果を得ており、これらのデータがアミロイドプラーク値の減少を示し続け、また本剤がこの疾患の臨床的進行を抑制することを示唆していることに勇気づけられています。第III相試験の患者登録もすでに完了しています。患者さん、ご家族、介護者、社会の深いアンメットニーズが私たちの活動を動機づけています」。
本第Ib相試験について
本第Ib相試験は、無作為化二重盲検・プラセボ対照・反復投与試験であり、前駆期のADまたは軽度アルツハイマー型認知症患者さんにおけるaducanumabの安全性・忍容性・薬物動態(PK)・薬力学(PD)および臨床的有効性を評価する試験です。本試験の主要評価項目は安全性であり、探索的評価項目はアミロイド値の減少、CDR-SB、MMSEでした。
本試験には、各1、3、6、10mg/kgを用いる固定用量群およびAPOE4陽性患者さんのみを対象とした最大投与量10mg/kgまでの漸増用量群が含まれています。
本第Ib相試験では、196名の患者さんがアデュカヌマブまたはプラセボの投与を受け、うち143名がLTE試験に移行しました。LTE試験に参加した患者さんは全員がアデュカヌマブによる治療に切り替えるか、または継続してアデュカヌマブ投与を継続し、プラセボから実薬への切り替え(n=37)、1 mg/kgから3 mg/kgへの切り替え(n=19)、固定用量群(3 mg/kg [n=26], 6 mg/kg [n=24], 10 mg/kg [n=19])、漸増用量群への切り替え(n=18)の6投与群に割付けられました。36カ月以上の長期試験のため、LTE試験の患者数は経時的に減少しました。
本第Ib相試験でアデュカヌマブの投与を受けた185名の患者さんのうち、46名の患者さんがアミロイド関連画像異常(ARIA-E(浮腫))を発現しました。8名の患者さんは2回以上のARIA-Eを発現しました。ARIAイベントの過半数は、治療過程の早期段階で発現しました。これらはMRIの画像上で確認された軽度なもので、臨床的に無症候性であり、4週間から12週間以内に解消または安定し、大半の患者さんは治療を継続しました。この第Ib相LTE試験において最も多く報告された有害事象は頭痛、転倒、ARIAでした。また今回の解析において、新たなARIA-Eの発現は認められませんでした。
36カ月のデータ
PETによる標準化取込値比(SUVR)によるアミロイドプラーク値は、36カ月の治療を受けた患者さんでは持続的に低下しました。10 mg/kg固定用量群におけるアミロイドプラーク値は、36カ月時点でアミロイド陽性と陰性を区別する定量的カットポイントよりも低いレベルを維持しました。
探索的臨床評価項目では、CDR-SBおよびMMSEによる認知機能および臨床症状の低下を検討した結果、特定のグループにおける、アデュカヌマブによる治療3年時点において、持続的な臨床症状進行の遅延が示唆されました。LTE試験の2年目時点におけるアデュカヌマブ漸増投与群の臨床効果は10 mg/kg固定用量群と全般的に一貫した結果でした。
36カ月時点の漸増コホートにおける平均用量は8.4 mg/kgでした。
36カ月時点では、全ての固定用量群と漸増群において、用量依存的ならびに経時的なアミロイドプラークの低下が観察されました。アミロイドプラーク、CDR-SBおよびMMSEの変化の詳細は、以下の通りです。