本資料は、米バイオジェン社が 2018年4月23日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語訳として発表させていただくものです。よって必ずしも日本の状況を反映したものでないことをご了承ください。内容につきましては原本である英文が優先します。

 

AANの年次会議でスピンラザ®(ヌシネルセン)の新データが幅広い年齢層で運動機能の持続的改善を示すとともに、乳幼児の生存ベネフィットを明らかに

  • SHINE試験のデータは乳児期発症型SMAに対するスピンラザの長期的なベネフィットを示し、3年近くに渡って試験参加者の運動機能を改善、無イベント生存期間を延長した。
  • 新たな知見によると、スピンラザで治療を受けた遅発型SMA患者さんはより長い距離を歩行でき、疲労度は経時的に変化なし、あるいは減少することが示された。これはSMAの自然経過とは対照的である。

米マサチューセッツ州ケンブリッジ[2018年4月23日]-バイオジェン(Nasdaq略号: BIIB)は、スピンラザ®(一般名:ヌシネルセン)のベネフィットを詳細に示す新しい知見を発表しました。それによると、スピンラザは乳児期発症型および遅発型の脊髄性筋萎縮症(SMA)両方の患者さんの母集団に効果を示しました。具体的には、運動機能の改善ならびに、最も重篤な患者さんの生存期間の延長です。これらの知見は、非盲検延長試験であるSHINE試験の中間解析結果に基づくものです。また、スピンラザがCS2/CS12試験からの遅発型SMA患者さんの運動機能と疲労度に及ぼす影響の解析にも基づいています。この研究は、2018年4月21日から27日まで米カリフォルニア州ロサンゼルスで開催されている米国神経学会(AAN)年次会議で発表されます。

バイオジェンのエグゼクティブバイスプレジデント兼チーフ・メディカルオフィサーであるアルフレッド・サンドロック(MD、Ph.D)は次のように述べています。「こうした結果はスピンラザの持つ前例のない強力な有効性を示すものです。それにより、患者さんの可動性と運動機能が改善するとともに、最も重篤な症状の患者さんにとっては、生存率が高まることにもなります。私たちは、医療関係者、医療機関、SMAコミュニティとの協働を続け、患者さんの年齢、重篤度、罹患期間に関係なくスピンラザへのアクセスを継続して提供していきたいと考えています」。

SHINE試験解析で報告された2017年6月30日現在の中間結果は、(最もI型を発症しやすい)乳児期発症型SMA患者さん(n=89)の非盲検延長試験から得られたものです。これらの患者さんは第III相ENDEAR試験から移行しました。参加者は、ENDEAR試験でスピンラザ治療を開始し、SHINE試験(n=65)に参加して治療を継続するか、ENDEAR試験のシャム・コントロール群からSHINE試験におけるスピンラザによる治療(n=24)に移行しました。

米テキサス州ダラスにあるテキサス大学サウスウエスタン医療センターのダイアナ・カストロ医学博士(筆頭執筆者)は次のように述べています。「この解析では、治療を早期にENDEAR試験で開始してSHINE試験に参加したか、後にENDEAR試験のシャム・コントロール群からSHINE試験に移行して治療を開始したかに関わらず、参加者の運動機能が改善し、無イベント生存期間が延長したことが示されています。このことは、スピンラザによる治療を早期に開始した人々の運動マイルストーンの達成度が大きくなり経時的に改善が続いたこと、および安全性についての新たな懸念は示されなかったことを確認するものです」。

こうした中間結果は、ENDEAR試験でスピンラザによる治療を開始してSHINE試験に移行した参加者も、ENDEAR試験でシャム・コントロール群からSHINE試験に移行してスピンラザによる治療を開始した人々も、HINE-2運動マイルストーンおよびCHOP INTEND評価スコアで測定した一般的な運動機能の改善を経験したことを示すものです。ENDEAR試験でスピンラザによる治療を開始してSHINE試験に進んだ参加者が死亡または呼吸器の永久装着に至るまでの期間の中央値は、73週間でした。ENDEAR試験でシャム・コントロール群であった患者さんの間では、死亡または呼吸器の永久装着に至るまでの期間の中央値は、22.6週間でした。ENDEAR試験でシャム・コントロール群に参加した後も生存し、呼吸器の永久装着を必要としなかった患者さんのうちの多くは、SHINE試験でスピンラザの投与を受けた後も無イベントのままであり、その無イベント生存期間は中央値で9.2カ月でした。

コロンビア大学医療センターの研究者たちがバイオジェンの支援を受けて主導した追加解析では、CS2試験およびCS12試験からのデータのサブセットが評価されました。CS2試験とCS12試験はいずれも多施設共同・非盲検の臨床試験であり、その目的は、外来参加者(n=14)の6分間歩行試験(6MWT)でのパフォーマンスおよび疲労度における変化を評価することにありました。この解析では、登録時点で年齢が2歳から15歳まででII型SMAの外来参加者(n=1)およびIII型SMAの外来参加者(n=13)の歩行能力と疲労度が検証されました。ベースラインにおける参加者の歩行距離の中央値は250.5メートルで、疲労度の中央値は14.8%でした。スピンラザによる3年近くに及ぶ治療の後には、歩行距離が延び(延長の中央値は98メートル)、同時に、疲労度は変化なしまたは低下しました(低下度の中央値は3.8%)。

米ニューヨークにあるコロンビア大学アービング医療センターのジャクリーヌ・モンテ助教授は次のように述べています。「スピンラザによる治療の結果、参加者はより長い距離を歩行することができるようになっただけでなく、その際の疲労度も安定または低下しました。さらに、この解析では、II型とIII型のSMA母集団において、スピンラザによる治療のベネフィットが経時的に増大していくことが明らかになりました」。

SHINE試験について
SHINE試験は継続中の第III相・多施設共同非盲検延長試験であり、対象はヌシネルセンの臨床試験プログラム(CS3A、ENDEAR、CHERISH、CS12、 EMBRACE などの試験)に以前に参加したことがあるSMAの患者さんです。SHINE試験の主要評価尺度および副次的評価尺度は、それぞれヌシネルセンの長期的安全性・忍容性および有効性を評価することにあります。SHINE試験の参加者は、最長で5年間にわたって評価されます。

スピンラザの臨床試験プログラム進捗状況
スピンラザは、SMA治療薬として承認された最初の疾患修飾薬で、現在、米国、EU、ブラジル、日本、スイス、オーストラリア、韓国、カナダおよびチリにおいて承認されています。その他の数カ国でも申請中であり、また追加的申請を計画中の国も数カ国あります。弊社コマーシャル部門によれば、2017年12月31日現在、拡大アクセスプログラム(EAP)と臨床試験に参加したSMAの方々の数は全世界で3,200名を超えました。

バイオジェンはスピンラザの全世界における開発、製造、販売について、アンチセンス治療におけるリーダーであるIONIS Pharmaceuticals社よりライセンス供与を受けています。バイオジェンとIONIS社は革新的な臨床開発プログラムを実施し、2011年に行われたスピンラザのヒトへの最初の投与から5年で、規制当局による最初の承認を実現しました。

SMA 1-5について
SMAは、脊髄および下位脳幹における進行性の運動ニューロンの脱落を特徴とする疾患であり、重篤で進行性の筋萎縮や筋無力を引き起こします。最も重篤なタイプのSMAの患者さんは最終的に麻痺状態となり、呼吸や嚥下など生命維持のための基本的な身体機能に支障をきたす恐れがあります。

SMN1(Survival of Motor Neuron 1)遺伝子の欠落または欠損により、SMAの患者さんは運動ニューロン維持に必要なSMNタンパク質を十分に産生することができません。SMAの重篤度はSMNタンパク質の量と相関関係があります。I 型SMAの患者は最もきめ細やかな支持療法を必要としますが、SMNタンパク質がほとんど生成されないため、支えなしに座ることができず、呼吸器による補助なしに2年以上生存することができません。II型とIII型の患者さんでは、より多くのSMNタンパク質が生成され重症度も下がりますが、日々の生活と人生に困難を強いられます。

スピンラザについて
スピンラザはSMAの治療薬としてグローバルレベルで開発が進められています。

スピンラザはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であり、5番染色体長腕(5q)内のSMN1遺伝子変異による SMNタンパク質欠損により引き起こされるSMAの治療薬として設計されました。本剤は変異したSMN1の重複遺伝子であるSMN2のスプライシングを変えるようデザインされています。その目的は完全に機能するSMNタンパク質の産生量を増やすことにあります6。ASOは標的RNAと結合して遺伝子発現を調節するようデザインされた短鎖の合成ヌクレオチドです。このテクノロジーを使うことで、スピンラザは機能的SMNタンパク質の量を増やす可能性を備えています。

スピンラザの投与は髄腔内注射によって実施する必要があります。これは、治療薬を脊髄周囲の脳脊髄液中に直接送達するものです7。SMA患者の脊髄では、SMNタンパク質の発現レベルが不十分なため、運動ニューロンが変性しています8

スピンラザは好ましい有効性と安全性のプロファイルを示しました。スピンラザについて最も多く報告されている有害事象は、上気道感染、下気道感染、ならびに便秘です。重篤な有害事象としてスピンラザの治療を受けた患者において無気肺がより多く報告されました。いくつかのASOでは、投与後に急性の重症血小板減少症を含む血液凝固異常と血小板減少症が報告されており、易出血性の危険性が増す症例の可能性があります。また、いくつかのASOでは、投与後に腎毒性が観察されています。ヌシネルセンは腎臓に分布した後、排泄されます。

バイオジェンについて
神経科学領域のパイオニアであるバイオジェンは、最先端の医学と科学を通じて、重篤な神経科学領域の疾患、神経変性疾患の革新的な治療法の発見および開発を行い、世界中の患者さんに提供しています。1978年にチャールズ・ワイスマン、ノーベル賞受賞者であるウォルター・ギルバートと フィリップ・シャープらにより設立されたバイオジェンは、世界で最も歴史のあるバイオテクノロジー企業の一つであり、多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、SMAの唯一の治療薬を製品化しました。また、アルツハイマー病、神経免疫疾患、運動性疾患、神経筋障害、痛み、眼科、神経精神医学といった神経領域の研究においても最先端の活動を展開しています。生物製剤の高い技術力を活かし、バイオジェンは高品質のバイオシミラーの製造と製品化にも注力しています。
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参考文献
  1. Darras B, Markowitz J, Monani U, De Vivo D. Chapter 8 - Spinal Muscular Atrophies. In: Vivo BTD, ed. Neuromuscular Disorders of Infancy, Childhood, and Adolescence (Second Edition). San Diego: Academic Press; 2015:117-145.
  2. Lefebvre S, Burglen L, Reboullet S, et al. Identification and characterization of a spinal muscular atrophy-determining gene. Cell.1995;80(1):155-165.
  3. Mailman MD, Heinz JW, Papp AC, et al. Molecular analysis of spinal muscular atrophy and modification of the phenotype by SMN2. Genet Med. 2002;4(1):20-26.
  4. Monani UR, Lorson CL, Parsons DW, et al. A single nucleotide difference that alters splicing patterns distinguishes the SMA gene SMN1 from the copy gene SMN2. Hum Mol Genet. 1999;8(7):1177-1183.
  5. Peeters K, Chamova T, Jordanova A. Clinical and genetic diversity of SMN1-negative proximal spinal muscular atrophies. Brain.2014;137(Pt 11):2879-2896.
  6. Hua Y, Sahashi K, Hung G, Rigo F, Passini MA, Bennett CF, Krainer AR. Antisense correction of SMN2 splicing in the CNS rescues necrosis in a type III SMA mouse model. Genes Dev. 2010 Aug 1; 24(15):16344-44.
  7. Evers MM, Toonen LI, van Roon-Mom WM. Antisense oligonucleotides in therapy for neurodegenerative disorders. Adv Drug Deliv Rev.2015;87:90-103.
  8. Lunn MR, Wang CH. Spinal muscular atrophy. Lancet. 2008;371(9630):2120-2133.
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