本資料は、米バイオジェン社が 2018年3月12日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語訳として発表させていただくものです。よって必ずしも日本の状況を反映したものでないことをご了承ください。内容につきましては原本である英文が優先します。

 

MDA(筋ジストロフィー協会臨床会議)で新データ発表
スピンラザの治療を受けた乳幼児と青少年の運動機能への効果を示す

  • NURTURE試験の結果によると、試験参加者全員(乳幼児25名)が存命しており、SMAの疾患の自然経過によれば悪化するところ、報告時に運動機能の改善を示した。
  • NURTURE試験参加者全員がWHO(世界保健機関)の規定する年齢相応の運動マイルストーン(支えなしで座る)を達成。これはⅠ型のSMAでは見られることのない発達である。
  • スピンラザ(一般名:ヌシネルセン)による治療を受けたⅡ型とⅢ型のSMAの青少年(最終通院時に17歳から19歳)に見られた一連の症例では、運動機能の安定または改善およびQOLの改善が見られた。

米マサチューセッツ州ケンブリッジ、2018年3月12日 -バイオジェン(NASDAQ略号BIIB)は、NURTURE試験の新たな中間結果を発表しました。NURTURE試験は遺伝学的に診断された未発症の脊髄性筋萎縮症(SMA)の乳幼児におけるスピンラザ(一般名:ヌシネルセン)の有効性と安全性を評価するための、進行中の非盲検・単群試験です。NURTURE試験においては、2017年7月5日現在、スピンラザによる治療を受けたすべての乳幼児が存命しており、人工呼吸器を装着していません。また疾患の自然経過と比較して、運動機能が改善するとともに複数の運動マイルストーンを達成しています。この試験は、スピンラザの有効性を示す一連の症例と共に、2018年3月11日から14日まで米バージニア州アーリントンで開催されるMDA(筋ジストロフィー協会臨床会議)で発表されました。

バイオジェンのエグゼクティブ・バイスプレジデント兼チーフ・メディカルオフィサーのアルフレッド・サンドロックM.D., Ph.Dは次のように述べています。「今回の試験結果は、世界初で唯一のSMA疾患修飾薬であるスピンラザの有効性を強調するものです。また、乳幼児や青少年を含むSMAの患者さんにスピンラザが提供しうるベネフィットを改めて示すものです。スピンラザはこれまでに実施された中で最大かつ十分な管理のもと実施されたSMAの臨床開発プログラムに支えられており、私たちは今後もSMAの研究を継続していく所存です。バイオジェンは、SMAの青少年がスピンラザの治療を受けることができるよう、医療関係者や医療機関と協働していきたいと考えています。スピンラザは、こうした患者さんの運動機能を維持するために有意な結果を示した治療薬です」。

NURTURE試験において、スピンラザは、生後6週間以内の乳児に投与されました(n=25)。これらの乳児は未発症ながらSMAであることが遺伝子診断により判明しており、SMN2遺伝子のコピー数が2個あるいは3個でした(コピー数2個がn=15でⅠ型SMAを最も発症しやすく、3個がn=10でⅡ型SMAを最も発症しやすい)。この中間解析時までに、乳幼児らは最長25.6カ月経過観察されました。この期間はI型SMAの乳幼児であれば大半が永久的に人工呼吸装置を必要とするようになる期間、あるいは死亡するまでの平均的な時間枠を大きく超えています。この中間解析は「Nusinersen in Infants Who Initiate Treatment in a Pre-Symptomatic State of SMA: Interim Efficacy and Safety Results from the Phase 2 NURTURE Study(SMA未発症状態で治療開始した乳幼児におけるヌシネルセン試験:第Ⅱ相NURTURE試験の有効性と安全性に関する結果)」というタイトルで、全ての乳幼児が存命しており、気管切開や永久的な人工呼吸器の装着を必要としなかったことが示されています。

米ニューヨークにあるコロンビア大学医学センターのDarryl C. De Vivo医師(医学博士)は論文の筆頭執筆者として次のように述べています。「NURTURE試験の新たな知見は、スピンラザが、乳児期の臨床的な発症の前に治療を開始したSMA患者さんへの継続的なベネフィットを論文化したものです。こうしたベネフィットには、年齢にふさわしい運動機能の発達向上と複数の運動マイルストーン達成が含まれます。NURTURE試験で治療を受けた乳幼児は遺伝的にSMAと診断されており、Ⅰ型かⅡ型のSMAを臨床的に発症する可能性がありましたが、十分な観察期間中に全員が支えなしで座ることができるようになり、その多くが歩行することができるようになりました」。

NURTURE試験の参加者は最終の通院時点でCHOP INTENDスコアの平均値が58.4を達成しました(64点満点)。CHOP INTENDはSMAの乳幼児における一般的な運動機能の評価尺度です。多くの参加者がこうしたスコアの改善と維持を続け、未治療のⅠ型SMAの患者さんの自然経過ならば有意な機能低下を経験したであろうポイントを超えました。全体的にこの試験では、スピンラザは良好な忍容性を示し、新たな安全上の懸念材料は認められませんでした。

MDAの会議では、「脊髄性筋萎縮症(SMA)の青少年におけるヌシネルセン治療経験」と題する一連の症例も発表されました。本発表では、Ⅱ型かⅢ型でスピンラザの投与を受けたSMAの青少年に対する効果の安定化・改善効果が包括的に示されました。

この一連の症例では、試験参加者(n=5)はCS2試験開始時に14歳から15歳でした。延長試験であるCS12試験における最終の通院時点では17歳から19歳でした。参加者のうち1名はⅡ型で、4名はⅢ型でした。参加者全員が複数回のスピンラザ投与を2.5年の観察期間にわたって実施されました。結果には、拡大ハマースミス運動機能評価スケール(HFMSE)上の改善、上肢モジュール(ULM)の安定化、6分間歩行試験(6MWT)の改善、神経筋肉疾患介護者経験の評価(ACEND)スコアの安定化と改善などが含まれていました。

米カリフォルニア州にあるスタンフォード大学医療センターのジョン・デイ医師(M.D., Ph.D.)は筆頭執筆者として次のように述べています。「この症例シリーズでは、Ⅱ型かⅢ型のSMAの青少年におけるスピンラザの効果が示されています。本試験の参加者においては、2年間の治療中に運動機能とQOLの安定と若干の改善が示されました。それは治療期間終了後も、私たちはスピンラザによる効果の安定化および運動ベネフィットの改善と維持を観察し続けました。未治療のSMAの青少年とは異なることが重要な点です。未治療のSMAの青少年は運動機能の低下を経験し、特に歩行できる距離が短くなり、上肢の活動が活発でなくなり、また健康関連のQOLの低下をきたします」。

米国におけるスピンラザの詳しい情報と処方情報はwww.SPINRAZA.comで入手できます。欧州では、https://www.ema.europa.eu/ema/ で処方情報を入手できます。

スピンラザの臨床試験プログラム進捗状況
スピンラザは、SMA治療薬として承認された最初の疾患修飾薬で、現在、米国、EU、ブラジル、日本、スイス、オーストラリア、韓国およびカナダにおいて承認されています。その他の数カ国でも申請中であり、また追加的申請を計画中の国も数カ国あります。弊社コマーシャル部門によれば、2017年12月31日現在、拡大アクセスプログラム(EAP)と臨床試験に参加したSMAの方々の数は全世界で3,200名を超えました。
バイオジェンはスピンラザの全世界における開発、製造、販売について、アンチセンス治療におけるリーダーであるIONIS Pharmaceuticals社よりライセンス供与を受けています。バイオジェンとIONIS社は革新的な臨床開発プログラムを実施し、2011年に行われたスピンラザのヒトへの最初の投与から5年で、規制当局による最初の承認を実現しました。

SMA 1-5について
SMAは、脊髄および下位脳幹における進行性の運動ニューロンの脱落を特徴とする疾患であり、重篤で進行性の筋萎縮や筋無力を引き起こします。最も重篤なタイプのSMAの患者さんは最終的に麻痺状態となり、呼吸や嚥下など生命維持のための基本的な身体機能に支障をきたす恐れがあります。

SMN1(Survival of Motor Neuron 1)遺伝子の欠落または欠損により、SMAの患者さんは運動ニューロン維持に必要なSMNタンパク質を十分に産生することができません。SMAの重篤度はSMNタンパク質の量と相関関係があります。I 型SMAの患者は最もきめ細やかな支持療法を必要としますが、SMNタンパク質がほとんど生成されないため、支えなしに座ることができず、呼吸器による補助なしに2年以上生存することができません。II型とIII型の患者さんでは、より多くのSMNタンパク質が生成され重症度も下がりますが、日々の生活と人生に困難を強いられます。

スピンラザについて
スピンラザはSMAの治療薬としてグローバルレベルで開発が進められています。

スピンラザはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であり、5番染色体長腕(5q)内のSMN1遺伝子変異による SMNタンパク質欠損により引き起こされるSMAの治療薬として設計されました。本剤は変異したSMN1の重複遺伝子であるSMN2のスプライシングを変えるようデザインされています。その目的は完全に機能するSMNタンパク質の産生を増やすことにあります6。ASOは標的RNAと結合して遺伝子発現を調節するようデザインされた短鎖の合成ヌクレオチドです。このテクノロジーを使うことで、スピンラザは機能的SMNタンパク質の量を増やす可能性を備えています。

スピンラザの投与は髄腔内注射によって実施する必要があります。これは、治療薬を脊髄周囲の脳脊髄液中に直接送達するものです7。SMA患者の脊髄では、SMNタンパク質の発現レベルが不十分なため、運動ニューロンが変性しています8

スピンラザは好ましい有効性と安全性のプロファイルを示しました。スピンラザについて最も多く報告されている有害事象は、上気道感染、下気道感染、ならびに便秘です。重篤な有害事象としてスピンラザの治療を受けた患者において無気肺がより多く報告されました。いくつかのASOでは、投与後に急性の重症血小板減少症を含む血液凝固異常と血小板減少症が報告されており、易出血性の危険性が増す症例の可能性があります。また、いくつかのASOでは、投与後に腎毒性が観察されています。ヌシネルセンは腎臓に分布した後、排泄されます。

バイオジェンについて
神経科学領域のパイオニアであるバイオジェンは、最先端の医学と科学を通じて、重篤な神経学的疾患、神経変性疾患の革新的な治療法の発見および開発を行い、世界中の患者さんに提供しています。1978年にチャールズ・ワイスマン、ノーベル賞受賞者であるウォルター・ギルバートとフィリップ・シャープにより設立されたバイオジェンは、世界で最も歴史のあるバイオテクノロジー企業であり、多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、脊髄性筋萎縮症の唯一の治療薬を製品化しました。また、アルツハイマー病、神経免疫疾患、運動性疾患、神経筋障害、痛み、眼科、神経精神医学といった神経領域の研究においても最先端の活動を展開しています。生物製剤の高い技術力を活かし、バイオジェンは高品質のバイオシミラーの製造と製品化にも注力しています。
当社に関する情報については、https://www.biogen.com およびSNS媒体TwitterLinkedInFacebookYouTubeをご覧ください。

参考文献
  1. Darras B, Markowitz J, Monani U, De Vivo D. Chapter 8 - Spinal Muscular Atrophies. In: Vivo BTD, ed. Neuromuscular Disorders of Infancy, Childhood, and Adolescence (Second Edition). San Diego: Academic Press; 2015:117-145.
  2. Lefebvre S, Burglen L, Reboullet S, et al. Identification and characterization of a spinal muscular atrophy-determining gene. Cell.1995;80(1):155-165.
  3. Mailman MD, Heinz JW, Papp AC, et al. Molecular analysis of spinal muscular atrophy and modification of the phenotype by SMN2. Genet Med. 2002;4(1):20-26.
  4. Monani UR, Lorson CL, Parsons DW, et al. A single nucleotide difference that alters splicing patterns distinguishes the SMA gene SMN1 from the copy gene SMN2. Hum Mol Genet. 1999;8(7):1177-1183.
  5. Peeters K, Chamova T, Jordanova A. Clinical and genetic diversity of SMN1-negative proximal spinal muscular atrophies. Brain.2014;137(Pt 11):2879-2896.
  6. Hua Y, Sahashi K, Hung G, Rigo F, Passini MA, Bennett CF, Krainer AR. Antisense correction of SMN2 splicing in the CNS rescues necrosis in a type III SMA mouse model. Genes Dev. 2010 Aug 1; 24(15):16344-44.
  7. Evers MM, Toonen LI, van Roon-Mom WM. Antisense oligonucleotides in therapy for neurodegenerative disorders. Adv Drug Deliv Rev.2015;87:90-103.
  8. Lunn MR, Wang CH. Spinal muscular atrophy. Lancet. 2008;371(9630):2120-2133.
CA-JPN-0127