本資料は、米バイオジェン社が 2018年2月14日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語訳として発表させていただくものです。よって必ずしも日本の状況を反映したものでないことをご了承ください。内容につきましては原本である英文が優先します。

 

THE NEW ENGLAND JOURNAL OF MEDICINE誌が遅発型の脊髄性筋萎縮症治療薬スピンラザの第III相試験結果を掲載

  • スピンラザは脊髄性筋萎縮症(SMA)で、時間経過に伴って運動機能が低下する患者さんの運動機能の安定もしくは改善を示した。
  • スピンラザによる治療を受けた患者さんの大半は、這う、立つといった上肢および全身の運動機能の改善を示した。
  • 世界初のSMAに対する遺伝子修飾薬であるスピンラザは、投与を受けた患者さんに対して極めて高い有効性と忍容可能な安全性プロファイルを継続して示している。

米マサチューセッツ州ケンブリッジおよびカリフォルニア州カールスバッド、2018年2月14日 -バイオジェン(NASDAQ略号BIIB)とIONIS Pharmaceuticals社(発音:アイオニス、NASDAQ略号IONS)は、遅発型(乳児期発症型以外、以下、遅発型)のSMA患者さんを対象としたスピンラザ(一般名:ヌシネルセン)を評価するための第III相試験、CHERISH試験の最終解析結果が、The New England Journal of Medicine(ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン)誌に掲載されたことを発表しました。The New England Journal of Medicine誌の2月15日号に掲載されたのは「遅発型脊髄性筋萎縮症におけるヌシネルセンvs.シャム対照比較試験」と題する論文の全文です。

ローマにあるPoliclinico Universitario “A. Gemelli”のU.O.C. Neuropsichiatria Infantileの治験総括医師(Lead study investigator)であるEugenio Mercuri, M.D.は以下のように述べています。「The New England Journal of Medicine誌に掲載されたCHERISH試験の結果は、時間の経過とともに運動機能が低下する遅発型SMA患者さんにおいて、スピンラザが運動機能と上肢機能に改善を示したことを強く示しており、これまでにはほとんど見られなかったことです。本試験でスピンラザの投与を受けた患者さんの何人かは、這う、立つといった運動マイルストーンの改善が達成され、病状の安定もしくは進行を遅らせることが示されました。物を持ち上げるといった上肢機能の改善も確認されました」。

予め設定されたCHERISH試験の主要評価項目は、ハマースミス運動機能スケール拡大版(HFMSE)のベースラインからの変化量によって規定される、運動機能の改善でした。HFMSEはSMA患者さんの運動機能を評価するために特別に設計された有効なツールです。 最終解析では、HFMSEスコアのベースラインからの平均変化量が15カ月時点で4.9ポイントの差を示し、スピンラザの治療を受けた患者さんは、運動機能において、治療を受けなかった患者さんと比較して、統計学的有意(p=0.0000001)かつ臨床的に意義のある改善を示しました。ベースラインからの変化量を測定すると、スピンラザ(n=84)の治療を受けた患者さんは、15カ月時点でHFMSEスコアが平均で3.9ポイント改善したのに対して、治療を受けなかった患者さん(n=42)のポイントは、平均1.0低下しました。主要評価項目の最終解析の結果は、中間解析の結果との一貫性を示しました。

 「The New England Journal of Medicine誌に掲載されたデータは、スピンラザが世界初のSMAに対する遺伝子修飾薬として、遅発型SMA患者さん一人ひとりにもたらし得るベネフィットをさらに強調するものです」とバイオジェンのエグゼクティブ・バイスプレジデントであり、チーフ・メディカルオフィサーであるアルフレッド・サンドロック M.D., Ph.D.は述べています。「CHERISH試験データは、これまでのSMA治療において最大規模の臨床開発プログラムの一部です。 このプログラムはスピンラザが、年齢や疾患のステージに関わらず、SMA小児患者さんの運動機能にプラスの影響をもたらす可能性を示しています」。

新たな運動マイルストーンおよび上肢運動機能の達成を含む、その他の評価項目で解析されたデータは、スピンラザによる治療を受けた患者さんにおいて一貫して良好な結果を示し、臨床的にも重要です。上肢機能モジュール改訂版(RULM)を用いて評価された上肢機能は、ベースラインから治療15カ月時点で、スピンラザによる治療を受けた患者さん(4.2ポイント)は、治療を受けなかった患者さん(0.5ポイント)よりも改善しています。RULMは歩行不能な患者さんに対する重要な運動機能の評価スケールです。

スピンラザは良好なリスク・ベネフィットの特徴を示しました。 安全性データは、遅発型SMAの一般的な母集団および腰椎穿刺を受けた個人において予測されたデータと一貫性を示しました。また、遅発型SMAにおける非盲検試験で報告されたデータともほぼ同様でした。

「本日掲載されたCHERISH 試験のデータは、昨年11月にThe New England Journal of Medicine誌に掲載された乳児期発症型のSMA患者さんの第III相ENDEAR試験の結果とともに、SMA治療におけるスピンラザの可能性を強調するものです」と IONIS社の研究開発担当シニアバイスプレジデント兼神経疾患フランチャイズのリーダーであるC・フランク・ベネットPh.D.は述べています。 「スピンラザの極めて重要な研究が著名な学術誌に掲載されたことは、SMA臨床開発プログラムの確かさを証明していると考えています」。

ポジティブな中間解析結果が示されたことを受け、バイオジェンはCHERISH試験を早期に中止し、試験参加者はSHINE非盲検延長試験に移行してスピンラザの投与を受ける選択肢が提供されました。 SHINE非盲検延長試験に加えて、バイオジェンはSMA母集団全般にわたるスピンラザの有効性と安全性をより深く理解するために、追加データの収集と評価を継続しています。 スピンラザ臨床開発プログラムには5年以上のデータが含まれており、SMAの治療介入における世界最大のエビデンスを提供しています。

乳児期発症型SMA治療におけるスピンラザの第III相試験であるENDEAR試験の最終結果は、2017年11月2日発行のThe New England Journal of Medicineに掲載されています。

CHERISHについて
CHERISHは、遅発型SMA患者さんを対象としたスピンラザの有効性と安全性を評価するための第III相試験で、多施設、無作為、二重盲検、シャム処置対照の試験です。15カ月の試験では、生後6カ月以降に症状が現れた2歳から12歳の歩行不能な患者さん126人に対するスピンラザの有効性を検討しました。CHERISHの主要評価項目であるHFMSEのベースラインからの変化量において、運動機能の改善が確認されました。

スピンラザの臨床試験プログラム進捗状況
スピンラザは、SMA治療薬として承認された最初の医薬品で、現在、米国、EU、ブラジル、日本、スイス、オーストラリア、韓国およびカナダにおいて承認されています。その他の数カ国でも申請中であり、また追加的申請を計画中の国も数カ国あります。
バイオジェンはスピンラザの全世界における開発、製造、販売について、アンチセンス治療におけるリーダーであるIONIS Pharmaceuticals社よりライセンス供与を受けています。バイオジェンとIONIS社は革新的な臨床開発プログラムを実施し、2011年に行われたスピンラザのヒトへの最初の投与から5年で、規制当局による最初の承認を実現しました。

SMA 1-5について
SMAは、脊髄および下位脳幹における進行性の運動ニューロンの脱落を特徴とする疾患であり、重篤で進行性の筋萎縮や筋無力を引き起こします。最も重篤なタイプのSMAの患者さんは最終的に麻痺状態となり、呼吸や嚥下など生命維持のための基本的な身体機能に支障をきたす恐れがあります。

SMN1(Survival of Motor Neuron 1)遺伝子の欠落または欠損により、SMAの患者さんは運動ニューロン維持に必要なSMNタンパク質を十分に産生することができません。SMAの重篤度はSMNタンパク質の量と相関関係があります。1型SMAの患者は最もきめ細やかな支持療法を必要としますが、SMNタンパク質がほとんど生成されないため、支えなしに座ることができず、呼吸器による補助なしに2年以上生存することができません。2型と3型の患者さんでは、より多くのSMNタンパク質が生成され重症度も下がりますが、日々の生活と人生に困難を強いられます。

スピンラザについて
スピンラザはSMAの治療薬としてグローバルレベルで開発が進められています。

スピンラザはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であり、5番染色体長腕(5q)内のSMN1遺伝子変異による SMNタンパク質欠損により引き起こされるSMAの治療薬として設計されました。本剤は変異したSMN1の重複遺伝子であるSMN2のスプライシングを変えるようデザインされています。その目的は完全に機能するSMNタンパク質の産生を増やすことにあります6。ASOは標的RNAと結合して遺伝子発現を調節するようデザインされた短鎖の合成ヌクレオチドです。このテクノロジーを使うことで、スピンラザは機能的SMNタンパク質の量を増やす可能性を備えています。

スピンラザの投与は髄腔内注射によって実施する必要があります。これは、治療薬を脊髄周囲の脳脊髄液中に直接送達するものです7。SMA患者の脊髄では、SMNタンパク質の発現レベルが不十分なため、運動ニューロンが変性しています8

スピンラザは好ましい有効性と安全性のプロファイルを示しました。スピンラザについて最も多く報告されている有害事象は、上気道感染、下気道感染、ならびに便秘です。重篤な有害事象としてスピンラザの治療を受けた患者において無気肺がより多く報告されました。いくつかのASOでは、投与後に急性の重症血小板減少症を含む血液凝固異常と血小板減少症が報告されており、易出血性の危険性が増す症例の可能性があります。また、いくつかのASOでは、投与後に腎毒性が観察されています。ヌシネルセンは腎臓に分布した後、排泄されます。

バイオジェンについて
神経科学領域のパイオニアであるバイオジェンは、最先端の医学と科学を通じて、重篤な神経学的疾患、神経変性疾患の革新的な治療法の発見および開発を行い、世界中の患者さんに提供しています。1978年にチャールズ・ワイスマン、ノーベル賞受賞者であるウォルター・ギルバートと フィリップ・シャープらにより設立されたバイオジェンは、世界で最も歴史のあるバイオテクノロジー企業の一つであり、多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、脊髄性筋萎縮症の唯一の治療薬を製品化しました。また、アルツハイマー病、神経免疫疾患、運動性疾患、神経筋障害、痛み、眼科、神経精神医学といった神経領域の研究においても最先端の活動を展開しています。生物製剤の高い技術力を活かし、バイオジェンは高品質のバイオシミラーの製造と製品化にも注力しています。
当社に関する情報については、https://www.biogen.com およびSNS媒体TwitterLinkedInFacebookYouTubeをご覧ください。

IONIS(アイオニス)社について
IONIS社はRNAを標的とした医薬品の研究開発のリーディングカンパニーであり、アンメットメディカルニーズの高い難病や希少疾患に特化した開発を進めています。自社が保有するアンチセンス技術を駆使し、IONIS社はファーストインクラスまたはベストインクラスの医薬品の豊富なパイプラインを創り、現在36以上の医薬品が開発中です。

スピンラザ(一般名:ヌシネルセンナトリウム)は世界各国で脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療薬として承認されました。バイオジェンがスピンラザの製品化を実施しました。すでに第III相試験を成功裏に終了した候補化合物には、アンチセンス薬で遺伝性TTRアミロイドーシス(hATTR)治療薬として開発中のinotersen、IONIS社が発見し、Akcea Pharmaceuticals社と共同開発したアンチセンス薬で家族性の乳糜血症 または家族性の脂肪異栄養症の治療薬として開発されているvolanesorsenがあります。Akcea社は、IONIS社の子会社で、重篤な脂質異常による心血管代謝疾患を治療する医薬品の開発ならびに製品化に特化したバイオ製薬企業です。承認されれば、volanesorsenは子会社であるAkcea社より発売される予定です。Volanesorsenの製造販売承認申請は米国、EU、カナダで提出済です。Inotersenは製造販売承認申請に向けて準備中です。IONIS社の医薬品ならびに技術は特許により保護されています。IONIS社に関する情報は以下をご覧ください。www.ionispharma.com

参考文献
  1. Darras B, Markowitz J, Monani U, De Vivo D. Chapter 8 - Spinal Muscular Atrophies. In: Vivo BTD, ed. Neuromuscular Disorders of Infancy, Childhood, and Adolescence (Second Edition). San Diego: Academic Press; 2015:117-145.
  2. Lefebvre S, Burglen L, Reboullet S, et al. Identification and characterization of a spinal muscular atrophy-determining gene. Cell.1995;80(1):155-165.
  3. Mailman MD, Heinz JW, Papp AC, et al. Molecular analysis of spinal muscular atrophy and modification of the phenotype by SMN2. Genet Med. 2002;4(1):20-26.
  4. Monani UR, Lorson CL, Parsons DW, et al. A single nucleotide difference that alters splicing patterns distinguishes the SMA gene SMN1 from the copy gene SMN2. Hum Mol Genet. 1999;8(7):1177-1183.
  5. Peeters K, Chamova T, Jordanova A. Clinical and genetic diversity of SMN1-negative proximal spinal muscular atrophies. Brain.2014;137(Pt 11):2879-2896.
  6. Hua Y, Sahashi K, Hung G, Rigo F, Passini MA, Bennett CF, Krainer AR. Antisense correction of SMN2 splicing in the CNS rescues necrosis in a type III SMA mouse model. Genes Dev. 2010 Aug 1; 24(15):16344-44.
  7. Evers MM, Toonen LI, van Roon-Mom WM. Antisense oligonucleotides in therapy for neurodegenerative disorders. Adv Drug Deliv Rev.2015;87:90-103.
  8. Lunn MR, Wang CH. Spinal muscular atrophy. Lancet. 2008;371(9630):2120-2133.
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