エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とバイオジェン・インク (Nasdaq: BIIB、本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、CEO:ミシェル・ヴォナッソス、以下 バイオジェン)は、このたび、抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体BAN2401について、患者856人による臨床第Ⅱ相試験(201試験)の12カ月時点の解析において、ベイジアン解析に基づく成功基準である主要評価項目を満たさなかったと独立データモニタリング委員会が判断したことをお知らせします。
事前に規定したプロトコルに従い本盲検試験を継続し、臨床的に意義ある結果を示すべく、18カ月時点の包括的な最終解析を行います。本最終解析結果は、2018年後半に得られる予定です。
201試験(ClinicalTrials.gov identifier NCT01767311)は、バイオマーカーでAβの脳内蓄積が確認されている、プロドローマルおよび軽度アルツハイマー病(総称して早期アルツハイマー病)患者を対象とした、プラセボ対照、二重盲検、並行群間比較、無作為化試験です。本試験デザインには安全性と無益性(futility)に関する評価を行う16回の中間解析が含まれており、実施されたすべての中間解析において、これらの中止条件に合致することなく、18カ月の最終解析に向けて試験が継続されています。
今回の12カ月時点のBAN2401の5投与群の有効性の評価は、エーザイが新規に開発した評価指標であるADCOMS (Alzheimer’s Disease Composite Score)を用いて行われ、Clinically Significant Difference(BAN2401がプラセボ群と比較して悪化を25%以上抑制)を達成する確率が80%以上になるかどうかが、ベイジアン解析に基づき判定されました。
18カ月時点で行われる最終解析では、ADCOMSに加えて、CDR-SB(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes)などの臨床評価指標のベースラインからの変化と共に、アミロイドPETで測定した脳におけるアミロイド蓄積量やvMRIで測定した総海馬体積などのバイオマーカーの変化など、より包括的な評価が行われます。
エーザイ ニューロロジービジネスグループ チーフクリニカルオフィサー兼チーフメディカルオフィサーであるDr. リン・クレイマーは、「ユニークに設計された本試験においてベイジアン統計を用いることで、従来の試験デザインに比較して、より早期に臨床的に意義ある結果を示すことを企図していました。アルツハイマー病の疾患修飾剤の有効性を検討するには、18カ月の治療期間がより適切と考えられており、18カ月時点での最終解析に期待をしています」と述べています。
BAN2401は、バイオアークティックAB(本社:スウェーデン、ストックホルム、CEO:Gunilla Osswald、以下 バイオアークティック)とエーザイの共同研究から得られた、アルツハイマー病に対するヒト化モノクローナル抗体です。2014年3月からエーザイとバイオジェンは共同開発を進めています。
エーザイとバイオジェンは、アルツハイマー病治療剤の共同開発・共同販売に関して、幅広い提携を行っています。
以上
参考資料
1. BAN2401について
BAN2401は、バイオアークティックとエーザイの共同研究から得られた、アルツハイマー病に対するヒト化モノクローナル抗体です。アルツハイマー病を惹起させる因子の一つと考えられている、神経毒性を有する可溶性の Aβ凝集体に選択的に結合して無毒化し、脳内からこれを除去するモノクローナル抗体です。本抗体による治療アプローチは、疾患症状への作用と病態の進行抑制が期待されています。エーザイは、本抗体について、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるアルツハイマー病を対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を獲得しています。また、2014年3月に、エーザイとバイオジェンは、本剤に関する共同開発・共同販促契約を締結し、2017年10月に内容の一部変更契約を締結しています。
2. 201試験(ClinicalTrials.gov identifier NCT01767311)について
本試験は、BAN2401の有効性及び最適投与レジメンをより効率的に見出すため、中間解析の結果によってより可能性の高い投与群への割付比率をアダプティブに変えるなどの試験途中のデザイン変更を自動的に可能とするベイジアン アダプティブ ランダム化デザインを用い、バイオマーカーによるアミロイド陽性を確認したプロドローマルおよび軽度アルツハイマー病(総称して早期アルツハイマー病)に対するBAN2401の安全性、忍容性、有効性を評価するプラセボ対照、二重盲検、並行群間比較試験です。本試験では、プラセボと実薬5投与群を用い、16回の早期成功を判断する中間解析、12カ月時点でのADCOMSに基づく解析、18カ月時点での包括的な最終解析によって、BAN2401の有効性に関する探索的評価と用量反応性の検討を行います。実薬群5群は、3用量(2.5㎎/kg、5 mg/kg、10 mg/kg)による2週間ごとの投与、2用量(5㎎/kg、10 mg/kg)による4週間ごとの投与からなります。
投与後12カ月時点の解析では、ADCOMSによるベースラインからの変化を評価するとともに、投与後18カ月時点の最終解析では、ADCOMSに加えてCDR-SBのベースラインからの変化、アミロイドPETで測定した脳におけるアミロイド蓄積量やvMRIで測定した総海馬体積の変化などを包括的に評価します。
<ベイジアン アダプティブ ランダム化デザインの概要>