本資料は、米バイオジェン社が 2017年4月24日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語訳として発表させていただくものです。よって必ずしも日本の状況を反映したものでないことをご了承ください。内容につきましては原本である英文が優先します。

 

ヌシネルセンの第III相臨床試験データが遅発型脊髄性筋萎縮症(SMA)の小児患者における運動機能の有意な改善を示す

  • 発症前乳児対象の試験での新たな中間解析で健常児と同等の運動マイルストーンを達成
  • 米国神経学会(AAN)の年次総会でSMAの広範な患者でのデータを発表

ママサチューセッツ州ケンブリッジ – 2017年4月24日 – バイオジェン(NASDAQ略称:BIIB)は、SPINRAZA®(一般名:ヌシネルセンナトリウム、以下、ヌシネルセン)の第III相臨床試験、CHERISH試験の最終結果を発表しました。この結果は、本剤が遅発型の脊髄性筋萎縮症(SMA)小児患者(2型または3型を発症する可能性が最も高い)の運動機能において、未治療の小児患者と比較して統計学的有意かつ臨床的に意義のある改善を示しました。総合的には、広範なSMA患者に対するヌシネルセンの高い有効性と良好な安全性プロファイルを引き続き裏付ける結果となりました。ヌシネルセンの開発プログラムはSMAを対象とした最大規模の臨床データを提供しています。ヌシネルセンに関するデータは、2017年4月22~28日にマサチューセッツ州、ボストンで開催された米国神経学会(AAN)の年次総会で発表されました。

「Ionis社と共同で実施したCHERISH試験は、小児の遅発型SMA患者においてヌシネルセンの有効性をさらに示し、すべてのSMA患者群に対して有効な治療であることを改めて確認することとなるでしょう。私たちの臨床開発プログラムは、早期治療介入することによる効果を示しています。この効果は、ヌシネルセンによる治療を受けた発症前の乳児において、健常児の発達と同等に運動マイルストーンの有意な改善を示したNURTURE試験のデータにより確認されています」と、バイオジェンのエグゼクティブ・バイスプレジデントでチーフ・メディカル・オフィサーであるアルフレッド・サンドロック(M.D.、Ph.D.)は話しています。

CHERISH試験: 遅発型SMA(2型または3型を発症する可能性が高い)
CHERISH試験は、第III相、多施設、無作為化、二重盲検、シャム(偽処置群)対照試験であり、小児の遅発型SMA患者を対象として ヌシネルセンの有効性および安全性を評価しました。15カ月間の試験で、生後6カ月以降で発症した、2~12歳の歩行不能な小児患者126例に対してヌシネルセンによる治療の効果を検証しました。

CHERISH試験の最終結果は、ヌシネルセンによる治療を受けた小児患者において運動機能の統計学的有意かつ臨床的に意義のある改善を示しました。運動機能の改善は、Hammersmith Functional Motor Scale Expanded(HFMSE)スコアにより、ベースライン時から15カ月までの治療による平均変化の差が4.9ポイントでした(p=0.0000001)。HFMSE は、SMA小児患者の運動機能を評価するために特別に設計された信頼性の高い検証済みのツールです。ベースライン時からの変化を測定する場合、ヌシネルセン(n=84)による治療を受けた小児患者の15カ月までの平均改善スコアは3.9ポイントでしたが、未治療小児患者(n=42)では平均で1.0ポイントの低下が認められました。主要評価項目の最終結果は、中間解析時と同等の結果を示しました。

新たな運動マイルストーンおよび上体の運動機能の改善を含めて、解析を行ったその他の評価項目データは、治療を受けた小児患者が上回っていることを一貫して示しました。

ヌシネルセンは、良好な安全性プロファイルを示しました。実薬投与群で発現した有害事象(AEs)、重度有害事象および重篤な有害事象(SAEs)の報告頻度は、ヌシネルセンによる治療を受けた小児患者で、未治療小児患者と比較して低い結果となりました。有害事象の多くは、SMAの疾患に関連する一般的によくみられる事象、あるいは腰椎穿刺による髄腔内投与に関連する事象のいずれかと考えられます。有害事象により試験を中断した小児患者はありませんでした。

「CHERISH試験では、ヌシネルセンによる治療を受けた小児の遅発型SMA患者のほとんどにおいて、運動機能の改善および疾患の進行の安定化または遅れが認められました。小児のSMA患者を37年間治療してきた医師として、ヌシネルセンにより治療を受けた患者で、臨床試験中に、腹ばいや支えを受けて立ち上がるなどのマイルストーンを達成するのを目にすることは、この上ない励みとなります。この種の臨床的に意義のある改善は前例がなく、SMA患者とその家族に新たな希望を与えるものです」とネマーズ・チルドレンズ病院(フロリダ州、オーランド)の神経内科チーフのRichard Finkel医師は話しています。

NURTURE試験: 発症前のSMA乳児
バイオジェンは、第II相、多施設、オープンラベル、単群試験の中間データについても公表します。

NURTURE試験では、治療開始時点で遺伝子検査で診断されたSMA患者で発症前の6歳未満の小児に対するヌシネルセンによる治療効果を評価しました。中間解析の時点で、試験に組み入れられた乳児(n=20)の試験参加期間は中央値で317.5日でした。すべての乳児は生存しており、呼吸器の装着(持続的な非侵襲的な呼吸器、侵襲的呼吸器、または気管切開)を必要とした小児はいませんでした。さらに、ほとんどの乳児は運動マイルストーンを達成し、首が座る、座位を保持する、立つおよび歩くといった、妥当性が確認された方法で測定された成長の指標は健常児と同等でした。

乳児3例で報告された有害事象は、治験責任医師によりヌシネルセンと関連する可能性は否定されました。有害事象により試験を中断または試験参加を取りやめた乳児はいませんでした。また、新たな安全性の懸念は認められませんでした。

「NURTURE試験の結果は、SMAと診断されればできるだけ早期にヌシネルセンによる治療介入を行うことの重要性を示唆しており、また広範囲のSMA患者集団に対して早期治療の重要性を示しています」とサンドロックは述べています。

ヌシネルセンの臨床試験プログラム状況
バイオジェンはヌシネルセンの世界的な開発・製造・販売権を、アンチセンス治療のリーダーであるIonis Pharmaceuticals(発音:アイオニス・ファーマシューティカルズ)社(NASDAQ略号: IONS)からライセンス導入しました。バイオジェンとIonis社は革新的な臨床プログラムを実施し、2011年に臨床試験でヌシネルセンを初めてヒトへ投与し、2016年には規制当局による初の承認を獲得しました2。

ヌシネルセンは2016年12月23日に、申請後3カ月で米国FDAより最初に承認されました。2017年4月には、欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会(CHMP)が、迅速審査プログラムのもとで、ヌシネルセンを5q SMA治療薬として販売承認を推奨する肯定的見解を採択しました。ヌシネルセンは欧州委員会(EC)によって今後数カ月いないに決定がなされるものと期待されています。さらに、バイオジェンは、日本、カナダ、オーストラリアとスイスなどで2017年中に申請を行いました。

SMA 2-6について
SMAは、脊髄および下位脳幹における進行性の運動ニューロンの脱落を特徴とする疾患であり、重篤で進行性の筋萎縮や筋無力を引き起こします。最も重篤なタイプのSMAの患者さんは最終的に麻痺状態となり、呼吸や嚥下など生命維持のための基本的な身体機能に支障をきたす恐れがあります。

SMN1(Survival of Motor Neuron 1)遺伝子の欠落または欠損により、SMAの患者さんは運動ニューロン維持に必要なSMNタンパク質を十分に産生することができません。SMAの重篤度はSMNタンパク質の量と相関関係があります。1型SMAの患者さんは最もきめ細やかな支持療法を必要としますが、SMNタンパク質がほとんど生成されないため、支えなしに座ることができず、呼吸器による補助なしに2年以上生存することができません。2型と3型の患者さんでは、より多くのSMNタンパク質が生成され重篤度も下がりますが、日々の生活と人生に困難を強いられます。

SMAの疾患啓発支援のため、バイオジェンは米国で「Together in SMA」というプログラムを立ち上げ、SMA関係者に資料や情報提供を行っています。詳細は、https://www.togetherinsma.com/をご覧ください(USのみ)。www.TogetherinSMA.jp/(日本のみ)。

ヌシネルセンについて
ヌシネルセンはSMAの治療薬としてグローバルレベルで開発が進められています。

ヌシネルセンはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であり、5番染色体長腕(5q)内のSMN1遺伝子変異による SMNタンパク質欠損により引き起こされるSMAの治療薬として設計されました。本剤は変異したSMN1の重複遺伝子であるSMN2のスプライシングを変えるようデザインされています。その目的は完全に機能するSMNタンパク質の産生を増やすことにあります7。ASOは標的RNAと結合して遺伝子発現を調節するようデザインされた短鎖の合成ヌクレオチドです。このテクノロジーを使うことで、ヌシネルセンは機能的SMNタンパク質の量を増やす可能性を備えています。

ヌシネルセンは髄腔内注射によって投与されます。これにより、SMNタンパク質のレベルが不足することにより運動ニューロンの変性が起きている患者の脊髄の周囲の脳脊髄液(CSF)8に直接治療薬を届けています9

ヌシネルセンについて最も多く報告されている有害事象は、上気道感染、下気道感染、ならびに便秘です。重篤な有害事象としてヌシネルセン治療を受けた患者において無気肺がより多く報告されました。いくつかのASOでは、投与後に急性の重症血小板減少症を含む血液凝固異常と血小板減少症が報告されており、易出血性の危険性が増す症例の可能性があります。また、いくつかのASOでは、投与後に致死的糸球体腎炎発症の可能性を含む腎毒性が観察されています。ヌシネルセンは腎臓で同定、排泄されます。

バイオジェンについて
最先端の科学と医学を通じて、バイオジェンは重篤な神経学的疾患、神経変性疾患の革新的な治療法の発見および開発を行い、世界中の患者さんに提供しています。1978年に設立されたバイオジェンは、世界で歴史のあるバイオテクノロジー企業のパイオニアであり、多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、脊髄性筋萎縮症の唯一の治療薬を製品化しました(国内未承認)。また、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)といった神経領域の研究においても最先端の活動を展開しています。生物製剤の高い技術力を活かし、バイオジェンは高品質のバイオシミラーの製造と製品化にも注力しています。当社に関する情報については、https://www.biogen.com およびSNS媒体TwitterLinkedInFacebookYouTubeをご覧ください。

参考文献
  1. Biogen. SPINRAZA USPI. December 2016.
  2. Darras B, Markowitz J, Monani U, De Vivo D. Chapter 8 - Spinal Muscular Atrophies. In: Vivo BTD, ed. Neuromuscular Disorders of Infancy, Childhood, and Adolescence (Second Edition). San Diego: Academic Press; 2015:117-145. 
  3. Lefebvre S, Burglen L, Reboullet S, et al. Identification and characterization of a spinal muscular atrophy-determining gene. Cell. 1995;80(1):155-165.
  4. Mailman MD, Heinz JW, Papp AC, et al. Molecular analysis of spinal muscular atrophy and modification of the phenotype by SMN2. Genet Med. 2002;4(1):20-26. 
  5. Monani UR, Lorson CL, Parsons DW, et al. A single nucleotide difference that alters splicing patterns distinguishes the SMA gene SMN1 from the copy gene SMN2. Hum Mol Genet. 1999;8(7):1177-1183. 
  6. Peeters K, Chamova T, Jordanova A. Clinical and genetic diversity of SMN1-negative proximal spinal muscular atrophies. Brain. 2014;137(Pt 11):2879-2896. 
  7. Hua Y, Sahashi K, Hung G, Rigo F, Passini MA, Bennett CF, Krainer AR. Antisense correction of SMN2 splicing in the CNS rescues necrosis in a type III SMA mouse model. Genes Dev. 2010 Aug 1; 24(15):16344-44.
  8. Evers MM, Toonen LJ, van Roon-Mom WM. Antisense oligonucleotides in therapy for neurodegenerative disorders. Adv Drug Deliv Rev. 2015;87:90-103.
  9. Lunn MR, Wang CH. Spinal muscular atrophy. Lancet. 2008;371(9630):2120-2133. 
SPI-JPN-0072