本資料は、米バイオジェン社が 2023年7月19日(現地時間)に発表したプレスリリースの日本語訳として発表させていただくものです。内容につきましては原本である英文が優先します。

 

「レカネマブ」について、アルツハイマー病の病理に対する効果、および皮下投与に関する最新の解析結果をアルツハイマー病協会国際会議2023(AAIC2023)において発表

臨床第Ⅲ相試験の詳細な解析により、ADの病理学的特徴であるAβとタウの双方に対するレカネマブの有効性を示す

新規データによるPK/PDモデルにおいて、皮下投与製剤は有効性と安全性に関して、新たな投与経路の選択肢となる可能性が示唆

    エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とバイオジェン・インク(Nasdaq: BIIB、本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、CEO:クリストファー A. ヴィ―バッハ―、以下 バイオジェン)は、このたび、アルツハイマー病(AD)治療剤レカネマブ(一般名、米国ブランド名:「LEQEMBI®」)について、臨床第Ⅲ相Clarity AD試験におけるレカネマブ投与によるアミロイドベータ(Aβ)の減少とパスウェイにおける下流のバイオマーカー変化の解析結果、ならびに現在開発中の皮下投与製剤に関する最新知見をアルツハイマー病協会国際会議(Alzheimer's Association International Conference:AAIC)2023において、発表したことをお知らせします。なお、レカネマブは米国において2023年7月6日にフル承認を取得しました。

    Clarity AD試験は、早期AD当事者様1,795人(レカネマブ投与群:10 mg/kg bi-weekly投与:898人、プラセボ投与群:897人)を対象とした、プラセボ対照、二重盲検、並行群間比較、無作為化グローバル臨床第Ⅲ相検証試験であり、主要評価項目(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes:CDR-SBの18カ月時点におけるベースラインからの変化)ならびに全ての重要な副次評価項目を統計学的に有意な結果をもって達成しました。Clarity AD試験の結果は、2022年11月に第15回アルツハイマー病臨床試験会議(CTAD)にて発表し、同時に査読学術専門誌the New England Journal of Medicineにも掲載されました。

レカネマブ:アミロイドの減少と下流のバイオマーカー変化
    Clarity AD試験では、重要な副次評価項目であるアミロイドポジトロン断層法(PET)測定による脳内アミロイド蓄積に対するレカネマブの効果以外にも、ADの病態生理に関わるアミロイド、タウ、神経変性、アストロサイト活性化、シナプス機能不全へのレカネマブの効果について、それぞれの変化を示すバイオマーカー(A/T/N+バイオマーカー)を用いて測定しました。測定したバイオマーカーは、アミロイドでは脳脊髄液(CSF)中のAβ1-42と血漿中のAβ42/40比、タウではCSFおよび血漿中p-Tau 181、神経変性ではCSF中の総タウとCSF中および血漿中のニューロフィラメント軽鎖、アストロサイト活性化では血漿中のGFAP(glial fibrillary acidic protein)、およびシナプス機能不全ではCSF中のニューログラニンです。
    その結果、レカネマブ投与群では、プラセボ投与群と比較して、血漿中Aβ42/40比の増加(ベースラインからの調整済平均変化量、レカネマブ:0.008、プラセボ:0.001、p<0.0001)のほか、血漿中p-Tau181の減少(ベースラインからの調整済平均変化量、レカネマブ:-0.575 pg/mL、プラセボ:0.201 pg/mL、p<0.0001)が観察されるなど、測定したA/T/N+バイオ マーカーについて、レカネマブ投与による改善が確認されました。これらの結果から、レカネマブがAD病態生理に関与するA/T/N+バイオマーカーに影響を与え、疾患進行を遅らせる生物学的効果を発揮することが示唆されました。

    また、今回、Clarity AD試験のタウPETを用いた脳内タウ病理について、ベースライン時の特性と初期解析の結果が発表され、レカネマブ投与により、側頭葉へのタウ病理の蓄積が遅くなることが示されました。さらに、タウPETによるタウの蓄積が確認されたサブグループを対象としたレカネマブの臨床効果の解析において、本集団全体で臨床効果を示すことが確認され、また、ADの初期段階を示す脳内タウの蓄積量が軽度な集団*では、顕著な臨床効果が認められました。

早期ADにおいて、静脈内投与と同等の有効性と良好な安全性が予測されるレカネマブの皮下投与
    レカネマブの静脈内投与と皮下投与を比較した試験において、レカネマブの皮下投与による生物学的利用能(バイオアベイラビリティ)は、静脈内投与と比較して約50%であることが示されました。さらにPK/PDモデルを用いた解析で、720㎎ weekly固定用量皮下投与は、10㎎/kg bi-weekly静脈内投与と同等の暴露量(AUC)を示し、アミロイドPET SUVr(standardized uptake value ratio)によって測定される脳内アミロイド蓄積も同程度に減少させる可能性が示されました。一方、静脈内投与のデータを用いた解析では、浮腫/浸出を伴うアミロイド関連画像異常(ARIA-E)はレカネマブの血中濃度と関連しており、最大血中濃度はARIA-Eに対する最も予測性の高い因子であることが示されました。皮下投与は、静脈内投与と比較して最高血中濃度が低くなるため、ARIA-Eの発現率が低くなる可能性が予測されます。

    本リリースに関するAAICにおける発表資料は、エーザイのコーポレートウェブサイトの投資家セクションに7月21日午前8時30分に掲載予定です。

    レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

以上

* タウPETプローブMK6240を用い、脳内タウの蓄積量が軽度の蓄積量を示す集団(MK6240によるカットオフ値が1.06未満、141名)、中程度の集団(MK6240によるカットオフ値が1.06から2.91、191名)、高度の集団蓄積量(MK6240によるカットオフ値が2.91超、10名)を定義しました。

参考資料

1. レカネマブについて
         レカネマブ(一般名、米国ブランド名:「LEQEMBI®」)は、BioArctic AB(本社:スウェーデン、 以下 バイオアークティック)とエーザイの共同研究から得られた、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。米国において、「LEQEMBI」は、2023年7月6日に米国食品医薬品局(FDA)よりフル承認を取得しました。米国における「LEQEMBI」の適応症はアルツハイマー病(AD)の治療です。「LEQEMBI」による治療は、臨床試験と同様、ADによる軽度認知障害または軽度認知症の当事者様において開始する必要があります。

米国におけるフル承認に基づく処方情報、Boxed Warningはこちらから入手できます。

         レカネマブについては、日本、欧州(EU)、中国、カナダ、英国(北アイルランドを除く)、韓国においても、それぞれ承認申請を行っています。日本と中国においては優先審査に、英国(北アイルランドを除く)においては、革新的な医薬品について上市までの時間を短縮することを目的としたILAP(Innovative Licensing and Access Pathway)に指定されています。

         レカネマブの皮下注射によるバイオアベイラビリティ試験は終了し、Clarity AD試験OLEにおいて皮下投与の評価が進行中です。維持投与レジメンは201試験OLEにおいて評価を行っています。
         2020年7月から、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)とのパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)で行っています。ACTCは、National Institutes of Health傘下のNational Institute on Agingによる資金提供を受けています。
また、2022年1月から、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床試験(Tau NexGen試験)が進行中です。本試験において、レカネマブは抗Aβ療法による基礎療法として選定されました。

2. エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について
         エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関する提携を2014年から行っています。レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

3. エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について
         2005年以来、エーザイとバイオアークティックはAD治療薬の開発と商業化に関して長期的な協力関係を築いてきました。エーザイは、レカネマブについて、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2015年5月にレカネマブのバックアップ抗体の開発・商業化契約を締結しました。

4. エーザイ株式会社について
         エーザイ株式会社は、患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念とし、この理念のもと、人々の「健康憂慮の解消」や「医療較差の是正」という社会善を効率的に実現することをめざしています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん領域」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患領域において、革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。
         また、当社は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット(3.3)である「顧みられない熱帯病(NTDs)」の制圧に向けた活動に世界のパートナーと連携して積極的に取り組んでいます。
         エーザイ株式会社の詳細情報は、https://www.eisai.co.jpをご覧ください。SNSアカウントTwitterLinkedInFacebookでも情報公開しています。

5. バイオジェン・インクについて
         1978年に設立されたバイオジェンは、多発性硬化症の広範なポートフォリオを有し、脊髄性筋萎縮症の最初の治療薬を製品化し、アルツハイマー病の病理に作用する二つの治療薬を共同開発するなど、数多くの革新的なイノベーションを生み出したグローバル・バイオテクノロジー企業です。バイオジェンは神経、神経精神、特定の免疫、希少疾患といった領域において画期的な治療となりうるパイプラインを進展させ、サイエンスを通じて人々に貢献するという理念を厳格に追求し、人々がより健康的に、持続可能で平等に生きていける世界となるよう取り組んでいます。

         バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体TwitterLinkedInFacebookYouTubeをご覧ください。

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